
まだまだ続く、垣根涼介熱。「ゆりかごで眠れ」読了です。まあ、南米ギャングもののサスペンス・アクションですね。「ワイルド・ソウル」とかに通ずる路線。主人公は日系コロンビア二世のリキ・小林・ガルシア、35歳。コカ・シンジケートのボスである彼は、浮浪児だった少女・カーサを育てています。日本で展開するコカ商売の部下が密告によって警察に逮捕されました。このトラブルを収めるために、リキがカーサを連れて来日するところから物語は始まります。新宿と池袋に縄張りをもつコロンビア・マフィアの確執を背景に、北新宿警察に囚われている部下の救出作戦は進みます。そこに絡むのが、潜入捜査の末コカ中毒になった刑事・武田和重。そして以前武田と恋愛関係にあったけれど今は別れ、さらには警察まで辞めてしまった元女刑事・若槻妙子。リキ、カーサに妙子と武田が絡んで、結末は…。というストーリー。「ワイルドソウル」の襲撃シーン。「サウダージ」や「クレイジーヘヴン」のように閉塞感の中で生きる男女の人生観。そんな、垣根テイストが散りばめられた長編です。アクション、クルマ、銃器、南米、コカイン、マフィア、警察、といった垣根さんの手持ちカードがすべて切られた書き下ろし。その執筆作業(ある意味ルーティーンといってもいいかもしれません)の水面下から「君たちに明日はない」や「南の島に

咲く花は」といった作品が生まれてきたのではないかな、と僕は推測します。これから先、サスペンス系ではアキや柿沢の続編が書かれ、もう一つの系譜としてリストラ屋・村上真介のシリーズがあり、さらにまったく関係ない単発ものも数多く生まれてくるのではないか…。垣根涼介さんには、もっともっと面白い小説を書いてもらいたいですね。