
カフカをモチーフにした、ナイロンの新作。正直な話、カフカの小説はせいぜい「変身」を読んだくらいで、けっこうめんどくさいなー、難解なのかなー、と思って望みました。ところがね、最初の30分くらいを見て「あ、これは不条理が当たり前な世界でのナンセンス・コメディなんだ!」と納得。以降、思いっきり楽しめました。(以下ネタばれ少々あり)ベースとなってるカフカ作品は「城」、「審判」、「失踪者」といずれも未完の3作品。それ以外にも、短編やらなんやらがぶち込まれてます。冒頭、素のままの設定で、村岡希美、廣川三憲、水野顕子の三人が登場して、自分の話をするんですね。いかにもありそうな。それが、すでにケラさんの術中な訳で。三人が居たのは病院の待合室ってことに。現代とカフカの人生とカフカの小説世界が入れ子入れ子になって展開するんです。「城」で測量士Kが測量しているのは世田谷区ってことになってるし。「審判」で裁かれるのは淡島交差点でブログ用に写真を撮った廣川さんだし。「失踪者」は何故か水野顕子の友人が出演するシアター・トラムで上演される芝居になってるし。するっ、するっ、とシチュエーションが地すべりしていくのが楽しくってしょうがないです。この作品は、超実験的でもあって、最近ケラさんが多用してるセットに映像を投影するオープニングの手法が全編に取り入れてあるんです。出演者たちが、白い全身タイツを着ていて、そこにも映像が投影されます。さらに白い戸板のようなボードに、ある時は自動車が映されたり、首から下の衣裳が映されたり、縦横無尽。映像の準備が大変だったろうな、と。出演メンバー全員によるバンド演奏とダンスもあるし。客席の通路は縦横無尽に駆使されるし。ビデオカメラで写した映像をスクリーンで見せるという技も使うし。いやもう、堪能! 休憩15分を挟んで19時開演、22時10分終演、と上演時間もグッド。12日まで、下北沢・本多劇場で上演中です。
主宰ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:三宅弘城、村岡希美、植木夏十、長田奈麻、廣川三憲、新谷真弓、安澤千草、藤田秀世、
皆戸麻衣、喜安浩平、吉増裕士
杉山薫、眼鏡太郎、廻飛雄、柚木幹斗/猪岐英人、水野顕子、菊地明香、白石遥、野部友視、田村健太郎、斉木茉奈、
田仲祐希、伊与顕二、森田完
中村靖日、横町慶子