
ビートたけしは好きだけれど、たけし軍団はそれほどでもありませんでした。だから、その末端に位置する浅草キッドについても、さしたる認識はなかったんですね。確かに、たけしを師匠と仰ぐだけあって、毒はある笑いなんだろうけれど、テレビで漫才やらないし。それが最近水道橋博士はラジオとかでよく見かける(聴きかける、かな?)し、玉ちゃんのスナック関係もけっこう人気あるようだし、評判もいいようなので手に取ったのが本書。実のところ、興味はあったんですが「お笑い男の星座」とかも未読でした。なので、ブログなど以外では浅草キッドの著作を読むのは初めてだったんです。それが、読み出したら止まらない。博士の過剰なまでに掛け言葉を多用した文章もにも感心したんだけど、玉ちゃんのまるで喋ってるような文章の魅力にもやられました。大きく分けて、入門までの少年時代と入門してからデビューまで、そしてデビュー後のこと、最後に家族のこと。という4つのセクションに、二人がそれぞれ3つの文章を寄せているんです。お互いに何を書くかは相談しなかったということなので、ダブリもあるけれど、まったく違った文体で同じ時代の出来事が描かれていて、逆に読むのが楽しかったです。岡山の裕福な家に生まれて勉強もできたのに高校で不登校になり大学進学という名目で東京に逃げ出した博士。西新宿の麻雀屋の子供に生まれやんちゃに育った玉ちゃん(後に麻雀屋はホモ・スナックに変わったそうですが)。それぞれの人格形成史、師匠たけしとの出会い、浅草フランス座や芸能界でのもがき、漫才師としてデビュー・そして謹慎を経ての再起、父親の死、などが活写されてページをめくる手が止まりませんでした。浅草キッドの芸能活動についてはそんなに知りませんが、この本を読んだら人それぞれ彼らのことが気になるはず。たけし&軍団ゆずりの破天荒なまでに笑いを追及する姿勢と一見その対極に見える家族や友人への暖かすぎる眼差しが実はほとんど同じ根を持っているということに気づかされます。いや、それにしても玉ちゃんの文章は魅力的でしたよ。という訳で、これから浅草キッドと水道橋博士と玉袋筋太郎の著作を絨毯爆撃してみようと思います。