
奥田英朗については、ホントに上手い作家としか言えません。デビュー当時の「最悪」や「邪魔」などドツボに嵌っていく人間を描いたミステリも斬新だったし、「マドンナ」や「ガール」のようなサラリーマンものも読ませます。もちろんメイン・キャラの精神科医・伊良部シリーズの面白さは比類がないですし。小さい作品だけど、「東京物語」みたいな青春ものも僕は大好き。で、「ララピポ」なんです。これが、ポルノグラフィというのかな。エロ系短編集なのですよ。確かに表紙もエロいです。腰巻にも、「いや~ん、 お下劣。」、「※紳士淑女のみなさまにはお勧めできません。(作者)」なんて書かれています。ましてや、カバーを捲ると…。中表紙の挿絵についてはここでは触れないことにいたします。これをお読みの婦女子のみなさま、ゆめゆめ書店で中表紙を覗いて見てはなりませぬでございますよ。まあ、決してお上品な小説ではないんですが、これが実に面白いのですよ。6人の主人公の6つの短編からなるのですが、その6人がそれぞれ関係を持っているんです。映画で言えば「クラッシュ」や「マグノリア」みたいな群像劇。あれを、切り取って短編集にしたみたいなもの。それぞれの立場から見直すと同じ事柄もまったく違った様相を呈してきたりして…。三次元のジグソウ・パズルみたいな感じ。主人公たちは。対人恐怖症のフリーライター32歳♂。主体性のないカラオケBOX店員フリーター26歳。風俗専門スカウトマン23歳♂。文芸コンプレックスの官能小説家52歳♂。専業主婦にして一応AV女優43歳♀。デブのテープリライター28歳♀。いかにも下流社会を代表する選りすぐりの負け犬揃いが繰り広げるソドムの市。なのに、6篇を読み終えた時に感じる清々しさは、なんなのでしょうか。各短編のタイトルも7、80年代のロック・フォーク・レゲエのタイトルから取っていて遊び心も満載。さらに本の題名になっている「ララピポ」の意味はほとんど最後に判明するのですが、このタイトルにも、超納得でございます。