どうも、最近の作品に触手が動かない石田先生なんですが、「IWGP」の最新刊となるとやはり手が出ます。 「千川フォールアウト・マザー」、「池袋クリンナップス」、「定年ブルドッグ」という短編が3つに表題作の中篇「非正規レジスタンス」という構成。ここのところ、池袋のやんちゃ・ボーイズのネタよりも、現代社会の問題をテーマにすることが多いこのシリーズ。今回も通奏低音は「格差社会」という感じです。特に表題作の「非正規レジスタンス」はグッド・ウィルで有名になった日雇い派遣とネットカフェ難民を扱っていて、まあアップ・トゥ・デイトな作品。家庭や家族に問題があって家を出たはいいが、アパートを借りることも出来ず、コイン・ロッカーに荷物を置き、ネットカフェで夜を過ごす若者が主人公です。どの作品も、若者や若い世代の現在を描くという意味では、よく出来てます。レギュラーの登場人物もマコトにおふくろ、タカシをはじめ依然魅力的なんだけど。でも、こんな池袋ストーリーの狂言回しがマコトである必要はないように感じられるんですよね、僕には。これで8巻目だから、IWGPも初出から10年近く経ったってこと。Gボーイズがキング・タカシの下に8年以上も存続してるというのも客観的には不自然だし。そろそろ、根本的なストーリーの構造改革が必要なんじゃないでしょうかね。
ところで先週かな「日経ビジネス」の書評欄でワタミの渡邉美樹社長が本書を取り上げ「格差をリアルに描く」と題して「現実と戦う彼らの実態を丁寧に取材した」とベタ誉めなんですが。それって、どうですか。現実を小説から学ぶなよ、でしょ。だいたい、個人的にこのワタミの社長って胡散臭く感じるんですけどね。テレビのコメンテーターとして登場したり、福祉介護サービスに手を出したり、政府の教育関係の委員やったり…。本当に素晴らしい経営者だったら、そういう関係には関わらないと思うんだけどなー。ホントのところはどうなんでしょうね。