世田谷美術館で開催されている「冒険王・横尾忠則」展に行ってまいりました。サブタイトルが「初公開!60年代未公開作品から最新絵画まで」というだけあって、展示されている作品の量は、まさに膨大でした。日本デザインセンターに勤務していた時代の版下原稿やイラストの色指定紙に始まり、「話の特集」や「平凡パンチ」などのグラフィックの仕事、寺山修司・唐十郎などのアングラ演劇のポスター、「うろつき夜太」や「幻花」などの小説の挿絵、そして最新のY字路や滝、夢に至るまで、ある意味横尾忠則さんの集大成とも言える展覧会でありました。今回、再確認できたのは、横尾さんがデザイナー出身のアーチストだということですね。大胆にして繊細かつ緻密な色指定を見ていると、あの遊び心満点の作品をつくりだす横尾さんの頭の中身が、チラッと見えたような気がします。冒頭に展示されている、アンリ・ルソーへのオマージュとも言うべき最新作は、どれもほんの少しずつ元絵を捻っていて、ある意味笑えるパロディにもなってます。「岩の上の子供」の右手にナイフがあって心臓から血が流れているとか…。横尾忠則のキーワードともいえる「模倣」や「もじり」がふんだんに生かされております。また、「奇縁まんだら」という肖像画の連作は会期中にもどんどん新作が追加されているようで、僕の行った時点であと6枚は追加できるスペースがありましたよ。草野新平や遠藤周作、松本清張など作家がメインのシリーズなんですけど、追加の新作見にもう一回行ってもいいかな。
ちょっと難を言えば、欲張りすぎてスペースに対しての展示作品が多すぎるのがねぇ…。ここまで手を広げなくてもな、という感じも正直ありました。平日にでも行って、じっくり見ていたら、丸一日つぶすことも可能なくらいのボリュームでしたよ。それにしても、横尾さん、緻密で努力を怠らず多作という凄い人ですね。