
もう、終ってしまいましたが、上野の西洋美術館で開催されていたムンク展の評判がよかったのでお正月に行ってきました。ムンクと言えば、やはり「叫び」。あの不思議な眼で絶叫する人間もどきの絵が有名ですよね。なので、ムンクって「狂気の画家」みたいに言われるのですが、実のところはちょっと違うようなのです。今回の企画展はムンクがその作品で取り組んだ「装飾」としての美術にスポットライトを当てています。ムンクじしんは、愛とか死とか不安とか絶望といったテーマを描いていたのですけれど、生涯を持って取り組んだのは個々の作品を独立して鑑賞するのではなく、美術館や室内に連続して飾られた総体としてひとつの作品を形作ることでした。それを彼は「フリーズ」と呼びました。どうやら建築用語からくるものらしいのですが、壁面の装飾を目的とした水平の帯のことだそうです。特にムンクは気に入った作品群を「生命のフリーズ」と名づけていたようです。ハイベルク邸の子供部屋やマックス・リンデの邸など個人住宅の装飾から、ベルリン小劇場、オスロ大学講堂、フレイア・チョコレート工場など様々な場所でムンクのフリーズは展開されていたのです。あの「叫び」もそのフレーズの中の一作品とは知りませんでしたね。油絵になると、あの抽象的な人間を色彩の帯で描くような作品が多いのですが、スケッチや素

描的な作品になるとちょっとピカソっぽいのとか、ホックニー風なのとかがあって、ムンクという画家へのイメージが一変しました。残念ながら、東京での展示は終ったのですが、19日からは兵庫県立美術館に場所を移すとのことですから、そちらで見る手もありますよね。←この絵は「生命のダンス」という作品、味があります。
ちょうど、お正月にはオスロ美術館から盗まれた「叫び」がいかにして取りもどされたかというドキュメンタリーもやってましたよね(たぶん再放送だけど)。結構、ムンクと縁があるお正月でした。