ナイロン100℃の31th SESSION 「わが闇」を本多劇場にて。初日から6日目。照明や舞台効果、役者とかもそろそろ慣れてきたようで、予想以上の演じこまれ方がグッド! 客演の3名、坂井真紀ちゃん、岡田義徳さん、長谷川朝晴さんもじゅうぶんナイロンに馴染んでいました。声もばっちり出てるし。主人公はケラさんお得意の三姉妹。作家である父親と精神を病んだ母が別居、そして奔放な女性を家に引き入れた父。長女は十代にして作家デビュー。末娘はやはり十代にして家出し芸能界へ。ただひとり普通であり続ける次女。それぞれの思惑が交錯し、それぞれの「わが闇」が描かれていきます。最近のケラ作品で多用される舞台全面に照明を当て映像も投影するという手法ですが、この作品でほぼ完成形を見たといえるのではないでしょうか。回想を映像で投影するというパターンから、一歩踏み出して、光を投影する部分を絞り込んでいくことで、スポットライトのような効果を得たり。さらには絵筆で塗りつぶしたかのようにブラックアウトさせたり。まさに「わが闇」というテーマに相応しい照明演出でありました。10分の休憩を挟んで、3時間20分ちょっとの長さではありますが、飽きてしまった観客はいなかったと思いますね。
今回はほとんどSF的な設定もなく日本の家族をテーマにした作品で、たぶん「犬は鎖に繋ぐべからず」公演における岸田國士を脚色するという経験が、いい形でオリジナルに結実したということではないでしょうかね。内容的には、若い劇団が扱いそうなストーリーでありながら、手練手管に満ち満ちているあたり、ナイロンの新境地なのかもしれませんよ。個人的に良かったのは、みのすけさんの悪党役。それから坂井真紀ちゃんのブラとパンツになるという体当たり系。毎度ではありますが、KYを通し続ける大倉孝二さんも笑わせてくれました。
多少ネタばれかもしれませんが、舞台になっている家のセット、途中で床が傾くようになっていましたね。映像の投射以外には大きな舞台転換もない中、文字通り、家が傾くってところが今回のポイントだってことでしょうかね。