酒ばかり飲んで、なかなか本が読めないのだが、ここのところようやく何冊か読了することができた。ちょっと感想でも書いてみようか。大沢在昌の「パンドラ・アイランド」は小笠原の父島がモデルと思われる南の島が舞台のサスペンス。主人公は元警視庁捜査一課の刑事。ある事件が原因で退職し、この島に公務員である保安官として赴任してくる。ごくごく平和そうな島なのだが、赴任直後に島民の不審な死や放火騒ぎなどが起こる。そして、病死と聞かされていた前任者の死にも疑惑がわき、島はきな臭いムードに包まれる。そして、ついに殺人が起こる。といった展開だ。島内部の地区同士の争い。米軍からの返還時の麻薬を巡る利権。半ば公営といっていい売春宿。そこに勤める美女。謎の外人医師。ヘリコプターで隔離された別荘へやってくる島出身の富豪。舞台や登場人物の設定は、まさにウエスタンを思わせるものがある。途中から、捜査に加わる1課の刑事がかつての同僚。離婚した元妻は警視庁のキャリア。と、大沢ならではのディテールも魅力的だ。結末のつけ方に少々不満は残るものの、エンターテインメントと割り切れば、最高の一作である。ハードカバーにしては活字が大きいためにページ数がかさみ、持ち歩きにくい仕上がりには納得がいかない。どちらかと言えば、ノベルス本のような感じで(つまり、ペイパーバックみたいに)読みたい話なのである。