光文社新書の竹内薫著「99・9%は仮説 思い込みで判断しないための考え方」は今年の2月に出た本。けれど、冥王星が太陽系の惑星ではなくなるというあのニュースによって、一層の注目を浴びました。科学者たちの間では冥王星についてそんな論議がなされていたことは周知の事実だったのかもしれませんが、それを一般向けの新書に分かりやすく書いたのが竹内薫さんだったのです。すでに35万部のベストセラーだそうです。予言的な部分にスポットライトが当たってはいるけれど、本書は実は非常にまっとうな科学史入門書でもあります。数学が公理と定理で極めて論理的に構成されるのと違って、物理や医学など一般科学にの定説は証明することがいかに困難か、が書かれています。帯にもあるように、「飛行機がなぜ飛ぶのか」だって明解には分かっていないのです。とどのつまり、この本で著者が言いたいのは「100%の科学定説はほとんど存在しない」とか「定説だと思っていたことが180度ひっくり返ることがあるのが科学」とかいうことなんでしょう。冒頭に、あなたは頭が固くなっていませんか? この本を読んで頭を柔らかくしましょう、と書いてありますが、どれだけ多くの人が既成概念に囚われているのかを改めて実感する本ですね。科学的な部分は、わざと簡単に(もしくは詳しくは触れずに)書いてあるあたりが、ちょっと読者をバカにした感じも受けますが、新書のレベルならそれもまた仕方ないのかもしれません。今どき、講談社ブルーバックスなんて手に取る人はいないでしょうから。天動説から地動説へ、絶対空間・絶対時間から相対性理論へ、アインシュタインそしてホーキング、そんな科学史における「世間の常識」の移り変わりを何となく感じ取れる本でした。重く考えずに読むのが正解かな。