全然趣味でもなかったんだけど、つい読んじゃった。林真理子の「アッコちゃんの時代」。実在した女性アッコをモデルにして80年代のバブル時代以降を描いた作品として、発刊当時は結構プロモートされてたでしょ。ちょっと期待して読んだんですが、薄っぺらな内容に辟易。主人公アッコは美貌の女子大生。六本木を中心に遊び続けるうちに、時代の最先端を行く遊び人として名を馳せるのだが、ふとしたことで知り合った「地上げの帝王」と付き合うことになる。これが早川興産社長の早川佐吉。てこれ、あの時代を知ってる人なら誰でも「最上興産の早坂太吉」とわかるはず。さらに後で付き合って子供を産むことになるのが飯倉「キャンティ」オーナーの息子でアルファレコードの設立者というんだから、これも五十嵐英雄となっているけど、川添象郎に違いない。その妻もミキと書かれているけど、風吹ジュンのことでしょ。ちょっとモデルがわかりやすすぎるんですよね。山崎豊子さんならも少し工夫すると思うんだけど…。どうも小説に深みがなくて。もちろん時代背景として、田中康夫の「クリスタル」みたいに、「レッドシューズ」、「TOKIO」、「ブラッスリーD」、「マハラジャ」などなど実在するお店の名前が続々と出てくるんだけど、こちらもどうも地に足がついていないんだなあ。林さん本人が遊んでなかったからかなあ。それと、主人公が、ただ美しくてプロポーション抜群の女というだけで、中味がなくてね。言い寄ってくる大金持ちに翻弄されて漂っているうちに、なんとなく人生が決まっていくあたりにも魅力がありません。唯一笑えたのが現代のアッコがまだ遊び続けていて(40歳で中学生の息子持ちなのに)、IT社長と付き合ってるというくだり。昔の話だけでは持たなくて現代まで引っ張ったのでしょう。その分小説全体の統一感は崩れてしまってますけどね。ほんの2、3時間で読めますが、おすすめはちょっと…。