ヨットの単独無寄港で世界一周の最高齢記録に挑んだ斉藤実さんが昨晩、愛艇「酒呑童子2」と共に帰ってきた。71歳にして、斉藤さんは地球7周を達成した。実は斉藤さんの世界一周への挑戦はすでに「孤闘―Fighting Alone」というタイトルで本になっている。斉藤さんという人は40近くなってからヨットを始め、50を過ぎて仕事からリタイアし、外洋ヨット一筋に生きてきた人なのだ。外洋ヨットマンで、最近有名なのは白石康次郎だけど、この康次郎が出たアラウンドアローン
という単独世界一周ヨットレースに3回連続で出場完走したのが斉藤実さんなのである。彼がその壮絶な闘いと思いを記した本なのだけど、「俺」という一人称で書き綴られる文章には不思議な味わいがある。世間の、というか日本の常識に背を向けた(といっていいだろう)老冒険家の言説は読む者を惹きつけずにはおかない。ヨットの専門用語などもあって、門外漢にはとっつきにくいかもしれないが、底に流れる生へのエネルギーとパワーには圧倒させられる。「人生って金かい? 権力かい? 地位かい? セックスかい?」という斉藤さんの言葉は、非常に印象的。会社や仕事の波に翻弄されて元気のなくなっている人はぜひ読んで欲しいなあ。