シベリア少女鉄道の最新公演「笑顔の行方」を紀伊国屋サザンシアターで見てきた。シベリア少女鉄道は「シベ少」と呼ばれ毛皮族などと並んで、この3年くらいで人気を得た劇団である。僕は今回が初見。主宰で脚本・演出の土屋亮一は、演劇の既成概念を引っくり返す演劇作法で、ファンを獲得したらしい。数ヵ月前の「SPA!」で土屋亮一のインタビューを読んで、いつかは見たいと思っていたのだ。しかし、今回は空回りの舞台だったようで少々残念だった。出演は藤原幹雄、前畑陽平、吉田友則、横溝茂雄、出来恵美、篠塚茜、佐々木幸子。まず、第一印象は役者がさほど上手くないということ。声が通らないのでサザンシアターくらいのハコでは台詞が聞き取れないのだ。さらに、悲しみにくれる芝居などでは、手を口元に持っていったりするので、さらに聞き取りづらくなる。劇団全体として大き目の劇場になれていない風。そしてなんと言っても今公演は稽古不足に見えた。音と映像(スライドを多用)と台詞と照明が、複雑に絡み合う演出なのに、タイミングミスが多いし、スライドの出し間違えなども何度もあった。この辺、残念。過去の回想を役者のシルエットと写真のスライド投射で演じる試みは面白いのだが、ギクシャクしてしまうと逆効果である。
この芝居最大のケレンは、格闘テレビゲームと芝居の融合である。舞台の大部分を占めるスクリーン前に役者が立ち「ストリートファイター(だと思う)」の格闘を演じるのである。もちろん舞台上部にはでっかいパワーメーターがある。その際、「昇竜拳」とか「パワーボム」とかの技の名前をもじった台詞を舞台前方で他の役者がしゃべるのだが、この台詞がまるで聞き取れないんだよなあ。「お父~さん」とか何度も言うんだけど、それがどの技なのか、さっぱり分からなかったす。役者の技量もだけど、稽古をみっちりやれば、もっと面白くなったと思うんだけどね。芝居の最後も唐突に客電が明るくなって、カットアウト。ほとんどのお客さんは「え! これで終わり!」って感じで、席立っていいのか怪訝な表情でした。まあ、3000円だからとは思うが、お勧めはできない公演だったなあ。とはいえ、次回作に期待します。