山本英夫といえば、「のぞき屋」、「殺し屋1」と革新的な作品を上梓してきたコミック作家。ある意味天才である。新作のたびにちょっとずつ絵柄が変わるのも凄い。その最新作が「ホムンクルス」。一時、テレビ番組のタイトルにも使われていたけれど、ホムンクルスとは、もともと錬金術用語。錬金術師のパラケルススが作り出したとされる人工生命体のことだ。フラスコに人間の精液・数種類のハーブ・馬糞を入れ密閉し、40日経過すると人間の形をしたものが出現するという話。このマンガで使われているのは、これから派生した「感覚ホムンクルス」というもののようだ。細かい説明が必要なら下の「感覚ホムンクルスとは」を読んでください。で、このマンガの話に戻りましょう。主人公は新宿中央公園のホームレス名越。ブルーシートの家ではなく、マツダのキャロル(大昔の軽自動車ですね)の中で暮らす中途半端なホームレスだ。ある日その名越に謎の医大生が接触してくる。報酬50万で人体実験の被験者にならないかというのだ。その手術の名はトレパネーション。頭蓋骨に穴を開けると第六感が芽生えるという話である。結局、手術を受けた名越の左目にはヘンなものが見え始める。ある男は紙のように薄っぺらく、ある女は砂の塊に、あるヤクザはロボットに…。という話。名越の左目に写る人間の姿が無意識の内面を反映したホムンクルス、という設定らしい。まだ、単行本は5巻しか出ていないが、相当な面白さである。この後、どう結末を付けていくのかは見えないが、とりあえず目が離せない。ところで、山本英夫の「殺し屋1」に原作ブレーンとして参加した精神科医に
名越康文という人がいるんだが、彼は本作にも協力している。それでホームレスの名が名越になったらしい。しかし、最近のマンガは侮れませんね。このレベルの小説なんてないでしょ、日本に。
感覚ホムンクルスとは、語源こそそのホムンクルスですが、人造人間のことではなく、医学理論の名称です。人間の熱いとか痛いとかいう感覚は直接指などの部位で刺激の感覚を処理しているようだが、実際は全て脳で処理されているのだ。このあたりは理解できると思いますが、脳のどの部分が五感を処理するのかを具体的に実験したのがペンフィールド博士という人。で、大脳の表面(皮質)に刺激感知部位がり、特に重要な手・指や口などの占める面積が大きいことなどがわかったらしいのです。その面積の比率で再現される
小人を、感覚ホムンクルスと呼ぶらしいのです。