福井晴敏の映画化といえば、来月「終戦のローレライ」が封切りになるし、夏には「亡国のイージス」も公開される。福井は「Twelve Y.O.」で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。続いて発表した「亡国のイージス」が日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞の3賞を受賞するとともに、「このミス」や「週刊文春ミステリーベスト10」でも3位にランクされ、ベストセラーになった。その後発表した「終戦のローレライ」も上位ランキングだった。実は、「ローレライ」の時に読もうとして買ったのだが、どうしても戦時中の世界についていけなくて最初の50ページくらいで放り出してしまったのだ。当然、面白いという噂も聞いていたが、「イージス」も未読だった。それがふとしたきっかけで文庫版を手に入れ読み出したら、止まらないではないか。複雑なプロット、多岐にわたる登場人物、細部にまで突っ込んだ人物造形、おしげもなく登場人物を殺せるドライさ、男気に生きる中年男の心情…。なんという作家だろう。極秘に開発された爆発物を北朝鮮の工作員が入手して…、というプロットは「シュリ」に似たものがあるが、発表年は同じ。たまたまの偶然であろう。舞台が日本であるだけで、フォーサイスをしのぐ発想力・構成力と筆力であろう。結末の甘さ(詰めが、ではなく、心情が、だ。)も含めて、僕の好きな小説である。これは、「ローレライ」も読まなくちゃね。多分、福井晴敏は海外を舞台にした作品を書けば、ダン・ブラウンにもなれるかもしれない。宮崎アニメのように「イージス」もが海外で受け入れられるかもしれないな。分厚い本だけど、初めの100ページを乗り切れば後は一気だと思う。文句なしの、おすすめです。って、俺が読むの遅かっただけジャン!!! 未読の方は、是非。