いやあ、洋画の邦題でこんなのも久しぶりでしょうね。昔は邦題に凝るのが当たり前だったのに、最近は現代をそのままカタカナってのが多くて。この作品も原題は「VENGEANCE(復讐)」 ですから、よくて「復讐」、最悪なら「ベンジャンス」ってなってたとこでしょう。そこはこういう作品を配給しようっていうファントム・フィルムですから。って、ちょっと凝りすぎちゃった嫌いもあるけどさ。「冷たい雨に復讐の銃弾を」くらいが普通なのに「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」だもんね。途中に句点のある映画タイトルも珍しいですよ。ってタイトルのことばかり書いてますが、あのジョニー・トー監督の最新作です。早速映画館で拝見。「ザ・ミッション 非情の掟」、「PTU」、「ブレイキング・ニュース」、「エレクション 黒社会」と続くジョニー・トー的香港ノワールは、前作の「エグザイル 絆」である種の頂点にたどり着いたと言っていいのかもしれません。ある意味やり過ぎの美学。リアリティよりも美学。美しく描くことだけを追求する美学。そして、その頂点はフランスとの合作という触媒を与えられて、またさらなる高みを見つけてしまったようです。何しろ主演が、ジョニー・アリディですよ。日本ではシャンソン歌手としての方が有名ですが、フランスでは人気俳優でゴダール作品にも出演している彼。酷薄そうな外観ながら、柔和な目元が印象的なジョニー・アリディは、ジョニー・トー作品にぴったりのはまり役でした。内容はタイトルにある通り、復讐譚w。マカオで娘の夫と二人の孫を惨殺され、娘を瀕死の重傷に追いやっ犯人にフランス人の父が復讐をする物語です。そして父が助けを請うたのがマカオの殺し屋3人組。トー作品ではおなじみのアンソニー・ウォンとラム・シュ、ラム・カートンが演じています。雨と追跡と銃撃戦、そして美食。話の展開には無理めなところやご都合主義的な部分が多々ありますが、それを補って余りある美学が全体を貫いているので、ジョニー・トー・ファンとしては百点満点の映画です。一昔前の香港映画かふた昔前のB級フランス・ノワールかという荒れた映像や文字がぼやけているタイトル・バックなど、もはや世界的名監督なのに流石トー監督よくわかってらっしゃる。公開4日目の新宿武蔵野館、夜7時の回はロンサムなナイス・ガイたちで6分の入りでした。
3人組とジョニー・アリディが銃の試し撃ちをする場面。広大なゴミ置き場に放置されていた古自転車を銃弾で彼方へ延々走らせていく映像。このシーンだけでもこの映画は見る価値があると思います。
予告編でも見れますが。