
もしかすると、黒川博行作品は始めてかも。大阪を舞台にしたサスペンス作家ということは知ってたけど、大阪がネックで避けてたんですよね…。この「煙霞」、あちこちで評判がよかったので、つい。そしたら、ハマリました。ひと言で言うならば、エルモア・レナードの関西版かな。舞台は大阪の私立女子高校。登場人物は、待遇に不満を持ち将来への不安を抱える美術講師の熊谷。音楽教諭でありながら、ブルースのライブ活動を続けている菜穂子。この二人に理事長の誘拐を持ちかける体育教師・小山田。学園を完全に私物化している理事長・酒井。と、ここから物語が始まります。最初は、酒井を拉致して学校経営の不正の証拠を突きつけ、理事長退任を迫り熊谷たちの待遇改善を図るはずが、事態は思わぬ方向に動き始めます。酒井だけ拉致するつもりが、その愛人で新地のホステスの朱美までもついてくる。しかも、気づくと、酒井たちは消えてしまうのです。この誘拐の裏には、学校ブローカーの箕輪とその相棒・中尾の存在があります。実は熊谷たちは、酒井から裏金と金塊を奪う計画に利用されたのでした。で、ここから、騙し騙されのジェットコースター・コン・ゲームが始まるのです。誰と誰がグルで、金塊はどこへ消えたのか…。リアルな大阪の地名と軽妙な大阪弁会話。軽く読めるのに、十分楽しめるエンタテインメントでした。熊谷と菜穂子の二人が、追っかけっこの最中に、イタリアンや焼肉や回転寿司に入っていろいろ食べる描写の、笑えます。もともと大阪で美術教師をやっていたという黒川さん。
文春のインタビューでその辺りとか、大阪でのキタとミナミの南北格差なんかについても語ってくれていますが、こちらも面白いです。