どうも最近の石田衣良さんの作品にはノリきれないなー、という不満がつのってたんですが、読んだ友人の評判がよかったので、気を取り直して手にしたのがこの本。若い小学校教師の話を石田サンがどう書くのか、と読み進めると、これがけっこうイイ! ある意味デモシカ教師の主人公・中道良太は、関東の北で海に面する県の公立小学校に勤める4年目教師。茶髪にシルバードクロのネックレスとプーマのジャージのリョータ先生は、いかにも今風。同学年のクラス順位争いでは、いつもビリという設定です。一方、リョータと180度正反対な切れ者教師が染谷龍一先生。コットンジャケットにネクタイをはずさず、通勤はドイツ車クーペで。という一見敵役風。ところが、この染谷先生のキャラが傑出してるんですね。この小説は、染谷先生をキャスティングした段階で成功が約束されたという感じ。元は新聞連載だったそうですが、4つの中篇からなる連作仕立て。最初の話は、父親とのごたごたから不登校になる生徒とリョータ先生のお話。2つ目は教師間のパワハラ&いじめの話。3つ目は自宅に放火してしまった生徒に関するもの。最後がクラス間の順位争いにまつわるお話。と、こう書いても面白さはわからないでしょうが、現実の小学校教師がいかに残業や時間外業務が多いかというリアリティと子供と接することの楽しさみたいなものがうまくバランスとって描かれていて、素直に共感できるのですね。年上の同僚教師への恋の結末の付け方も悪くないし、主人公の成長小説としてもナイスだし、ちょっとしか登場しない教師のキャラクターも細かく書かれていて、最近の石田作品としては、ベストなのではないですか? という訳で、しばらく休止していた石田衣良読みを復活させてます。「夜を守る」を読んで、「逝年」と「親指の恋人」が待機中。さらに「夜の桃」も行ってみようかという今日この頃。でも、「IWGP」の新作が読みたいなー。
ちなみに、「5年3組リョータ組」の表紙のイラストは、1話目で重要な役割をはたす小学校の屋上じゃないかなー、と推察いたします。この風景をよく見てからこの小説を読むとさらに心に沁みるのではないかな、と。