なんとなく読書パワーに欠けてたこの頃でしたが、ちょいと復活の兆し。先ほど読んだ「魔物」に半分がっかりしてもめげず、大沢在昌「魔女の盟約」を読みました。「魔女の笑窪」の続編で、週刊文春に連載されてた作品です。前作の「魔女の笑窪」は連作短編集で、ひとつひとつの短編を読み進めるうちに主人公の人となりや背景が分かってる仕掛けで、非常によく出来た物語でした。ヒロインは売春を生業とする島「地獄島」を抜け出した美人裏家業コンサルタント・水原。島からの追っ手と戦ううちに、再び島へ乗り込むこととなるというストーリー。今回は長編仕立て。島との因縁に一つの決着をつけた水原のその後、という設定です。前回の物語の裏に隠された陰謀が露わになっていきます。逃亡先の釜山で頼った韓国マフィアが皆殺しにされる事件が発生。現場にいた水原は窮地に立たされます。そこに接触を図ってきた中国人女性・白里。彼女が水原に求めるのは、復讐を手伝うために日本へ同行することでした。前作の結末が出発点であり、前作と共通のキャラクターもたくさん出てくるので、まずは「魔女の笑窪」を読んでからがおすすめです。日本のヤクザ、中国の裏社会、中国の公安、などが入り乱れての展開になるのですが、前作を書いている段階でこの展開を想定してネタを振っていたとしてら、大沢さん凄いですね。前作は「地獄島」と日本のヤクザの世界を中心とした世界構築で、主人公のキャラクター造型や細かい心理描写に際立ったものがありました。今作は、新たに国際クライムものとしてアジアを見据えた展開になっていて、フレームとしては大きく成長しているのではないでしょうか。結末に続編への種を蒔いてるあたり、6:4で次回作もありそうな予感。「魔物」ではちょっとがっかりしちゃたけど、「魔女の盟約」ではすっきりさせてもらいました。
読書パワー戻ってきたので、非常に面白いと評判の貴志祐介「新世界より」にかかりますです。分厚い上下ハードカバーだ、これは。