三谷幸喜の演劇「笑の大学」が映画化された。「笑の大学」はもともと96年に初演、この年の読売演劇大賞・最優秀作品賞に輝いている。僕も98年の再演時にパルコ劇場で見たが、それはサイコーに面白かったのを、よおく憶えている。西村雅彦と近藤芳正の二人芝居で戦争中の喜劇脚本の検閲をめぐるコメディである。検閲官を西村雅彦、劇団の脚本家を近藤芳正といキャスティング。二人の台詞だけで2時間を越える長丁場をぐいぐいと引っ張る脚本力に脱帽したものだ。その映画化なのだが、見る前から、懐疑的だった。だって、取調室だけで演じられる二人劇を映画にする意味ってあるかなあ。普通そう思いますよね。しかし、見たら面白かった。ちょっと結末をいじってるのと(といったって脚本自体は三谷サン本人が書いてるんだから問題ある訳じゃないし)映画としては気持ち長いかなあ、という程度で、十分満足な作品である。出演は検閲官に役所広司、脚本家に稲垣吾郎。役所は上手すぎるくらい上手い役者だし、三谷作品の舞台には「巌流島」に出ている。吾郎クンはちょっと心配だったけど、明るい粘着質をよく演じている。監督の星護はフジ系列の共同テレビ所属。「世にも奇妙」や「いいひと。」の演出を手がけている人。あまり、ドラマ演出家としては意識していなかったが、こういう絵変わりのない舞台が限定されたドラマの演出は抜群に上手いのかもしれない。考えてみれば、「世にも奇妙な物語」って、舞台劇の小品ていう感じだもんね。ちょっと、この秋必見の映画かも。あと、舞台にはなかった、劇団の看板役者に小松政夫とか、一瞬しか映らないカメオ出演も数知れず。中にはクレジットに出ない人までいるんだから、スクリーンから目が離せないよなあ。