吉川英治新人賞受賞の「
隠蔽捜査」、シリーズ第2弾です。前作で息子の不祥事によって左遷されたキャリア警察官僚・竜崎伸也が主人公。東大法学部卒で頑ななまでに、合理的な官僚である竜崎が所轄の署長に左遷されたらどうなるか。赴任先は、警視庁・大森警察署。46歳のキャリアにはまさに役不足と言っていいポジションです。しかし、竜崎はすべてを受け入れて署長という職務をまっとうしようとします。そんな時起きたのが、品川駅前のサラ金強盗事件。逃亡した犯人たちを確保すべく、緊急配備が引かれます。そして、大森署管内で犯人による立てこもり事件が発生。実弾4発が発砲され、混乱を極める現場で対立するSIT(捜査一課特殊班) とSAT。SITが犯人の生存確保を目指すのに対し、人質の安全のためにと突入を主張するSAT。現場指揮官として苦渋の選択として竜崎は突入を決意します。しかし、突入の妥当性を巡って警察庁の主任監察官の監察対象となってしまう竜崎…。前作にも劣らずの面白さでした。山のような書類の決裁のために判子を押し続ける署長の毎日とかネゴシエーターとして事件を解決しようとするSITとあくまで対テロ特殊部隊であるSATの立ち位置の違い、など警察の内情も興味深かったです。前作同様、小学校の同級生で因縁含みの警察庁刑事部長・伊丹との丁々発止のやりとりも健在です。微笑ましかったのは、東大に行ってアニメに関わる仕事をしたいという息子に戸惑いながら、薦められた「風の谷のナウシカ」のDVDを見て感動してしまう竜崎の姿でしたね。
ところで、シリーズタイトルが「隠蔽捜査」というのはちょっとどうでしょう。確かに第1作はそういう内容でしたが、今回はあまり警察による隠蔽がある訳でもないし。売れた前作のイメージは残したいのでしょうけどね。次からは警察キャリア・竜崎伸也シリーズとして売ってほしいですね。