このところ、嵌っていた真山仁さんがデビュー前に合作で書いた処女経済小説です。なので、ペンネームは、香住究。合作の相手は大手生命保険会社を退職した人だったとか。なので、生保の世界に関しては詳しいことこの上なしです。とは言え2002年とかの生保破綻をいま読んでもちょっと実感はありませんね。このあたりが、経済小説の弱いところかな。この時代といえば、すでに日産生命も東邦生命も破綻していましたね。物語の舞台となるのは清和生命保険。この時代の生保はバブル時代の拡大投資が祟って経営困難に陥っていたんですよね。清和生命もご多分に漏れずです。大手生保との統合による生き残りや外資への合併などを模索しつつ、破滅への道を歩んでいく清和の社員たちの苦闘を描いた小説です。ネットで検索してみると、モデルとなっているのは朝日生命と千代田生命ですね。それぞれのケースが上手にミックスされているようです。主人公と言えるのは、会社のダークな処理を手がけてきた社長室次長の各務と社長候補と言われながら正義感が災いして関西へ左遷されている中根の二人です。それぞれの生い立ちと生保との関わりをバックボーンに、なかなか読ませる小説になっています。生保の内実を知る人との合作でネタを詰め込みすぎた嫌いはありますが、処女作としてはなかなかと言える力作ではないでしょうか。外資の投資銀行ゴールド・マックスというのが出てきたり、「ハゲタカ」以降へと続く真山さんの片鱗も伺えます。とは言っても、内容も古びていて、盛り込まれている父子の愛憎劇も通り一遍に見えてしまうのも否めません。よほどの真山ファンでなければ、お勧めはしませんね。