最近嵌りまくりの真山仁作品。これで、一応全部読んだことになるのかな(まだ、別ペンネームによる処女作は読んでませんが…)。サブタイトルに「小説国際エネルギー戦争」と付されているのが、この「マグマ」です。物語は、真山作品ではおなじみのハゲタカファンド「ゴールドバーグ・コールズ」が買収した九州にある地熱発電会社を主人公のファンド・マネージャーがターンアラウンド(企業再生)するという流れです。一見、今までの作品の延長上にあるようですが、これが少々違うのです。この作品で真山さんが書こうとしたのは、明らかに原子力発電に重きを置きすぎ地熱発電をないがしろにしてきた、日本のエネルギー政策や電力会社によるエネルギー支配の矛盾点だと思われます。ある意味、経済小説というよりはエネルギー企業小説になっているとも言えますね。エネルギーに関する企業ものに経済関係の専門知識を散りばめた小説、と言えるかもしれません。では、一般小説として詰まらないのかというと、さにあらず。地熱発電に関する記述は、ほとんど現在の日本に存在する技術を盛り込んでいるようですし、日本での電力の自由化やヨーロッパでの原子力発電の廃止とアジア各国の原子力発電への取り組みなど、最新の国際エネルギー事情が取り入れられて、エネルギーに関する最新知識を面白く知ることができる読み物になっています。「虚像の砦」でも放送業界と総務省と政治家の関係を扱っていましたが、本書でも電力会社・官僚・政治家たちの怪しい関係が取り上げられています。主人公の美しい(ま、だいたい小説の場合女性は美人と決まってますね)ファンド・マネージャー野上妙子が海外の休暇から帰ると会社にはデスクも所属部署もなくなっていて、突然ただ一人九州の地熱発電会社に行かされるなど外資らしいエピソードもふんだんです。妙子の愛読書がP・D・ジェイムズの「女には向かない職業」だったりするあたりも、真山テイスト入ってます。赤坂の料亭が「ぽん太」だったりするのも、真山作品の愛読者にはうれしいのではないでしょうか。