白洲次郎ブームとか白洲正子ブームとかに続く流れなのでしょうかね。日本の現代骨董の世界を作り上げたと言われている青山二郎をフィーチャーした展覧会に行ってきました。展覧会のタイトルは、「青山二郎の眼~白洲正子の物語も小林秀雄の骨董もこの男から始まった」というもの。一部の層の人たちにはグッとくるサブタイトルなんでしょうね。麻布の裕福な家に生まれ、十代のころから中川一政に絵画を学び、審美眼を育てた男。稀代のディレッタントというべきか超高等遊民と呼ぶべきか。柳宗悦、河井寛次郎、浜田庄司らと同時代に生き、小林秀雄、河上徹太郎、永井龍雄、仲原中也、白洲正子らと文芸論や骨董談義を戦わせ、装丁家としても数々の傑作を残したくせに、生涯職に就くこともなかったという、そんな奴。いや、カッコよすぎますがね。そういうカッコよさが存在できた時代だったのでしょうね。ちなみに左の写真、右が青山二郎で左が小林秀雄です。さて、この展覧会は横河グループの創業者・
横河民輔氏の中国陶磁の膨大なコレクションの図録を作り上げたことで、骨董界での揺るぎない地位を確保した青山に関連した中国古陶磁を第1章として展示しています。そして、第2章では李朝・朝鮮工芸を、第3章では日本の骨董を見せてくれます。最後の第4章では、装幀家青山二郎を特集し彼の全体像を描き出そうとしています。国立博物館や日本民藝館に所蔵されているものを集め、個人の所有になる逸品も揃えるなど、キューレーターの苦労がしのばれる、力の入った展覧会でした。骨董のいいところは、現代アートと違って、何か格を破るというか、調子を乱すと言うか、美しさと危うさがバランスを取っているところかもしれませんね。ちょっとした欠けも
美しさと見てオッケーという感覚は、好きだなあ。実際、青山二郎という人も、ちゃんと勉強した訳ではなく、自然に審美眼を養ったと言われてます。いや、もしかすると、養うことさえ不可能で、生まれつきのものなのかも知れません。彼の書いた箱書きや手紙、日記なども展示されているのですが、構えることなく自然な文章と筆さばきが素敵です。手作りの骨董図録や装丁などもカワイイ! と言ってしまいたいくらい。僕は、青山さんが絵を学んだ中川一政画伯がとても好きなのですが(と言って勘違いしないでね、鶴太郎が好きって訳じゃないですよ!)、何かとても通じるものを感じてしまいました。一番好きだったのは装丁のコーナーの最後の方にあった北條
民雄著「いのちの初夜」の書店用ポスターですね。ハンセン病について書かれたこの本のポスターに、紅く手書きで書かれた惹句「文化の恥!」の文字。素晴らしいセンスしてますね。この展覧会、去年の夏に滋賀県信楽のMIHO MUSEUMを皮切りに松山市の愛媛県美術館、新潟市美術館を回り、世田谷美術館に来たと言うもの。まだ来月までやってますから、是非どうぞ。入場料1000円というのも、とってもリーズナブルです。可愛いビアジョッキ(青山二郎から白洲正子に譲られたというものです←左の写真)や蕎麦猪口なんかもありますし。