海外でのヒット・ミュージカルを完全に日本語化して日本人キャストで上演する、という劇団四季のやり方にいろいろと意見はあるのですが、時にはうまくいくこともあるといういい例がこの「ウィキッド」でした。ストーリーは、「オズの魔法使い」の主人公ドロシーがオズの国を訪れる以前のオズでのお話。後にいい魔女と悪い魔女になるグリンダとエルファバが大学で同級生として出会うところから始まります。エルファバは生まれた時から、全身が緑色という呪われた女の子。しかし、魔法の力を持っているのです。それぞれの思惑とオズの魔法使い(実は魔法を使えない、というあたりは、きちんと「オズの魔法使い」と同じです)との関わりなどから、自分思いとは裏腹にエルファバは悪い魔女・ウィキッドになってしまうのです。舞台装置や大掛かりな仕掛けものなどは、ブロードウェイのものに引けを取らない出来栄えで、(たぶん)振付もあちら通り。さすがに2004年のトニー賞3部門受けただけのことはあります。とは言え、劇団四季の輸入ミュージカルがすべて成功という訳にいかないのは、やはりキャストの問題にあると思うのです。しかし、この
「ウィキッド」でエルファバを演じる濱田めぐみさんは、圧倒的な声量でその不安を吹き飛ばしてくれます。グリンダ役の沼尾みゆきさんは素晴らしい高音を持っているのですが、演技力には少々疑問符がつく感じ。その他の出演者も、言ってしまえば玉石混交とうい中で、濱田めぐみさんがこの舞台すべてを素晴らしいものにしてくれていました。久しぶりに見た、素敵な四季のミュージカルでした。
ところで僕は、「オズの魔法使い」に中学生の頃、虜になっていたんです。フランク・ボームの原作は実は「オズの魔法使い」に始まって、全部で14巻にも渡るシリーズになのですね。しかもボームの死後も他の作家によって書きつがれ、その総数は40冊にも及ぶと言われています。30年ほど前になるでしょうか、早川文庫がSFだけでなく、ファンタジー分野のものも出すということで、このシリーズが文庫として出版されたのです。僕はそれに嵌まっていた訳です。新井苑子さんのイラストによる表紙がとても印象的でした。そんな昔のことを懐かしく思い出しました。