喫煙者がいかに厳しい状況におかれているかは、日本も同じですが、アメリカのそれと言ったら比較になりません。州にもよるらしいんですが公共の場所では喫煙不可ということで、吸える場所も相当限られているようです。またレストランやバーでの喫煙も不可という州も多いそうです。それに、煙草販売に関する規制も強く、ニューヨークで1箱が10ドル以上もするとか…。そんな嫌煙大国アメリカで、タバコを勧めるということがどう言うことか。そんなタフな商売をやってる男が主人公の映画なのです。アメリカのタバコ産業が金を出して運営されているタバコ研究アカデミーは、いわゆる圧力団体です。タバコ業界にとって有利な研究を行なったり、タバコ普及のPRをやっています。アーロン・エッカート扮するニックはアカデミーに属するチーフPRマン。厳しいマスコミ渦中で禁煙vs喫煙の討論を繰り返し、天下一品の話術で、タバコ業界を利する活動を行なっています。その論法は屁理屈というよりスマートにさえ見えてしまうほど。そんなある日逆風だらけのタバコ産業を活性化するために業界の大ボス・通称キャプテン(ロバート・デュバル)は喫煙を好意的に扱いスモーカーを増やす映画制作を思い立ちます。キャプテンの名代としてハリウッドへ向かうニック。そしてクライマックスは、禁煙ガチガチ派のフィニスター上院議員(ウィリアム・H・メイシー)提出のタバコのパッケージにドクロ・マークを記載する法案の公聴会です。四面楚歌の会場でニックはどう反論するか…。という映画。小品ではありますが、ヒネリの効いたギャグとワイプやブラックアウトを使った場面転換なんかも新鮮です(ちょっとチープではある
けれど)。オープニング・タイトルのクレジットをすべてタバコのパッケージのもじりにしたのも、古臭いけど好感もてます。監督はショートフィルムなどを手がけていて、本作が長編デビューという28歳のジェイソン・ライトマン監督。出演者で驚いたのが、別れた奥さんのところで暮らす息子をまたまたキャメロン・ブライトがやってたこと。この数ヵ月で彼を3回見ましたよ。確かに巧いけどね。DVDで見るのがいい映画かもしれません。タバコ好きだったら、プカプカ煙を燻らしながら見られるし…。
ところで、「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」でも思ったけれど、こういうタイトルの邦題って、本当に気になりますよね。例えば、「007 ダイヤモンド・フォーエバー」とか「ロード・オブ・ザ・リング」とかね。この映画の場合、「サンキュー・スモーキング」となってますが、これだと「スモーキングさんにありがとう」にしか見えないでしょ。もちろん原題は「Thank you for smoking」、「ご喫煙、ありがとうございます!」という意味ですよね。日本人が英語できないというのは、こういう邦題をほったらかしにしてるからじゃないかな。気の利いた邦題に出来ないから、と英語をカタカナにしただけの題を付けるのなら正確にやってくださいよ! 「’s」を忘れたり、複数形を単数にしちゃったり、冠詞の「the」や「for」をわざと忘れてしまうのはダメ! お願いしますよ。