町山智浩さんが昨年のベスト・ワンと力説してる映画「トゥモロー・ワールド」を映画館で拝見。驚異的な長回しが特徴的なのだそうで、初見はDVDではなくスクリーンで見たかったのですよ。何とかその思いが叶いました。いや、確かに凄いです。本当に素晴らしい映画ですよ。見てない人は、今からでも遅くありません、見てください! 長回しだけが、凄いだけではなくて、ストーリーの設定から全体のトーン・世界観が完璧なのですよ。このショックは「ブレードランナー」見た時以来かな。圧倒されました。舞台は2027年のイギリス。世界はすでに核戦争でほぼ壊滅状態です。アメリカもヨーロッパも恐慌状態。しかも、女性たちの出産能力が失われて、18年間にわたって全く子供が生まれなくなっているのです。そんな中で、ロンドンはかろうじて秩序を保っていますが、世界各国から流入する難民と反政府ゲリラによって治安は悪化する一方です。主人公のセオ(クライブ・オーウェン)は反政府グループに突然拉致されます。リーダーは元妻のジュリアン(ジュリアン・ムーア)。彼女はセオに不法滞在者である黒人女性のキーの通行証を入手できないか、と頼むのです。実はこのキーは妊娠8ヵ月。人類にとって18年ぶりの新生児は生まれるのか…。という展開です。それにしても、この映画の長回しは驚嘆に値します。役者のスタンバイや演技のタイミングだけでなく、アクション、銃撃、爆破、といったさまざまな要素を取り込んだ長回しは、気の遠くなるような作業だったと思います。市街戦のシーンではステディ・カムを使って6分を超える移動撮影(しかも、途中からカメラのレンズには飛び散った血が付いてるんです!)をやったり。狭いクルマの中で小型カメラで乗客を撮り、挙句の果てはカメラそのものが自動車から降りて全体を写すという離れ業までやってのけるのですから、イマジネーションの豊かさと周到な準備、さらに運の良さがなくては、到底実現し得なかったフィルムだということが出来るでしょう。うーん、感服。これは、DVDも買わなくては…。ところで、僕の好きな映画監督ロバート・アルトマンも長回し好きなんですよね。「ザ・プレイヤー」のオープニングの8分を超える長回しなんかが有名です。まあ、ブライアン・デ・パルマも長回し好きなんだけど、映画の出来にばらつきがあるのでちょっと評価しにくいかな。日本で言えば相米慎二監督ですが、あの人の場合は緻密さと追求する長回しというよりも一つのテイストと言っていいでしょうね。
ちなみにその長回しを見たい方は、You tube にありますので、
こちらとか
こちらを覗いてみてください。凄さの一部が垣間見れます。