映画「バブルへGO!」の公開にあわせて、「気まぐれコンセプト クロニクル」が出版されたのはご存知の通り。連載初期には1冊だけ単行本が出た4コママンガなんだけれど、その後は一切単行本化されることなく放置されてました。それを一気に広辞苑ほどもある厚さで出すというのもホイチョイ・プロダクションズらしいやり口でしたね。そのホイチョイの主宰で「バブル」の監督でもある馬場康夫さんが書いた本が、同時期にもう一冊でています。それが本書。装丁は和田誠イラストが使われているのですが、三谷幸喜さんのエッセイのようには垢抜けているデザインとも言えません。そしてタイトルも、何が言いたいのかよく分からない感じ。ホイチョイの馬場さんお得意のディズニーランドの裏ガイド本かと思ったのですが…。これがなかなか、骨太のドキュメンタリーというか、人物評伝だったのです。浦安に東京ディズニーランドを誘致した堀貞一郎。その上司であり日本のラジオ・テレビ・広告・イベント業界の草分けであるところの小谷正一。そしてディズニーランドの生みの親であるウォルト・ディズニー。この3人の偉大なエンタテインメント・プロデューサーたちの因縁の物語を書いた、と馬場さんは前書きで言っています。ディズニーを加えているのは「おまけ」みたいなもんですが、馬場さんとしては日本のメディア&エンタテインメント業界を作り上げた師弟コンビ、小谷・堀のことを書いておきたかったのですね。最近でこそ、映画制作の裏側とかテレビ業界の内情とか黒子が表に出ることが多いけれど、昭和30年から40年にかけてのイベントとか遊園地とか海外タレント招聘の裏話って表に出ることは極めて少なかったのです。時々、小説などの形をとって世に出ることはあっても(開高健「巨人の玩具」とか井上靖「闘牛」とか)、今のように実際の仕掛人たちがおおっぴらに語られることはごく稀でした。
さて、この本に登場するのは、江戸英雄、小林一三、正力松太郎、三木鶏郎、井上靖、力道山、手塚治虫、竹村健一、サトウサンペイ、渡辺美佐、和田誠という、綺羅星のごとき面々。まさに戦後日本のエンタメ業界を引っ張ってきた人たちです。三菱地所と三井不動産によるディズニーランド誘致のプレゼン合戦を皮切りに語られる物語は、記録としてもl読み物としても一級品と言ってよい出来だと思
います(まあ、ご存命の方もおられるので多少きれいごとに終始した嫌いはありますが)。やはり惜しむらくは、タイトル。もう少し考えようがあったと思うなー。講談社の担当はディズニーランドと入れればファンが買うとでも思ったんでしょうかね。主人公が3人もいるので絞りにくかったとは思うんですけど、例えば「心を掴め! エンタメ・プロデューサーになる100の方法」とかの方がまだマシだと思うんだけど…。
※ちなみに、←は「気まぐれコンセプト クロニクル」。税込2310円だけど、ほぼ1000ページに4コママンガが1800本以上は掲載されてるので、割って見れば4コマひとつにつき1.25円。そう考えれば結構なお買い得かもしれませんぜ(ホイチョイ風)。