「Shall We ダンス?」のリメイク権がハリウッドに売れたせいなのか、11年も映画を撮っていなかった周防正行監督の超久しぶりの新作が「それでもボクはやってない」。痴漢冤罪を扱った法廷ドラマということで、地味目ではあるけれど注目作です。公開の一足先に試写で拝見。なにしろ、2時間20分という長さなので途中で厭きるかもと思っていましたが、緻密な構成と脚本でしっかり見せられてしまいました。痴漢冤罪については時々報道されているみたいですが、警察の杜撰な取調べと三権分立と言いながら、国家権力の敗北を許さない検察・裁判所による意図的な裁判運営によって、例え本当にやっていなくても有罪になりうるという現状がうまく描かれた映画でした。一見公平に行なわれている感のある裁判制度の欠陥を裁判所ではなくて映画館で裁こうという試みでしょうかね。まあ、再来年には裁判員制度も導入される訳で、この映画のおかでが
さらに裁判への関心が大きくなればいいのですけど。主演の加瀬亮は素朴でシンプルながら若い世代の気持ちを上手に演じていて好感が持てます。主任弁護士役の役所広司はもちろん素晴らしいのですが、その補佐役の新人弁護士を演じる瀬戸朝香も熱演。その他、脇役に実力派が揃っていて一瞬たりとも緩
みのないドラマになっています。音楽は周防監督の弟の周防義和が担当しているのですが、音楽や効果音を極力抑えたつくりが作品にリアリティを与えています。留置場生活や検察調べ・裁判の進め方など、ディテールも細かく描かれていて、興味は尽きません。「Shall We ダンス?」のようなカタルシスのある作品ではないので、大ヒットは難しいかも知れませんが、渋くロングランヒットするような予感がします。