陸上競技未経験者7人を含む10人の学生が、1年の期限で箱根駅伝に出場する。素人だって不可能と分かる話。マンガだよね、とすら表現できない、まったくの夢物語。それがこの小説なんですよ。だけどね。その夢物語が凄いんだなぁ。まさにこれが本好きが読みたかった物語。いやもう残りページが減っていくのに反比例して、読んでいるこちらの中には表現しがたい感動が増大していく訳で…。なかなか得難い読書体験でしたね。あり得るか、という意味でのリアリティはゼロ。なのに、あるかもね、と思わせるリアリティは120%。素晴らしいぞ、三浦しをん! 三人称小説でありながら、走っている最中は一人一人の内面まで描ける、という意味で駅伝は小説の素材として完璧でした。ストーリーは急造素人集団が箱根に挑む、という一言につきるので。キャラの紹介だけしようかな。主人公、走(かける)は高校時代に陸上部で問題を起こした天才ランナー。走を寛政大学竹青寮に誘うのが、やはり過去を持つ陸上部出身の4年生・ハイジ。ハイジの天才的ともいえる策謀で、箱根に挑戦する羽目になる寮生たちがまたホントに、いー奴らばっかりでね。女の子にモテたいだけのサッカー経験者である双子のジョータとジョージ。かつて山奥の村でそう呼ばれていた、神童。司法試験に在学中に合格しているユキ。タバコ好きで二浪・三留中のニコチャン先輩。クイズ番組きちがいのキング。アフリカから国費留学に来ているムサ。部屋中マンガだらけの漫画おたく(でも美形)の王子。それぞれがバリバリに立ったキャラの上、背負ったバックグラウンドもよく考えられ抜かれています。表紙のイラストがまたよく出来てるし、章立てが駅伝の10区間になぞらえてあったり、男だけの話かと思うとちゃんと色恋ごとも用意してあるし、細かい技も十二分に楽しめます。時あたかも箱根駅伝の真っ最中に読んだので、面白さも二倍でありました。こりゃ、必読。駅伝の記憶が鮮やかなうちに是非どうぞ。
おまけですが、ドラマ化するならということでキャスティングを考えてみました。
走=平岡佑太
ハイジ=オダギリジョー
双子のジョータとジョージ=斉藤祥太&斉藤慶太
神童=市原隼人
ユキ=忍成修吾
ニコチャン先輩=ロバート秋山
キング=劇団ひとり
ムサ=思いつきません…
王子=タッキー
いかがでしょうかね。