東直己の最新刊は、あの「ススキノ・ハーフボイルド」の続編。前回も主人公だった札幌の高校生・松井省吾は今回大学生になっている。もともと、札幌随一の進学校に行っていたのに何故か北大受験に失敗(まあ、「ハーフボイルド」の事件を引きずったのかも知れないけど…)。何を血迷ったか自暴自棄になって、北海道で最も「偏差値の低い」私立大学、道央学院国際グローバル大学(通称・グロ大)に入学してしまったのだ。しかし、大学にはなじめず、また回りの学生を「頭の悪いバカ」と見てしまう自分に激しい嫌悪を抱いて鬱々とした日々を送る省吾。そんなある日、グロ大の学生がヤクザにリンチされている現場に遭遇してしまう。交番に駆けこむが警官はとりあわず、それどころか、省吾自身が公務執行妨害と傷害の現行犯で逮捕されてしまう…。という展開。前作同様、「ケラー」を通して「便利屋」も登場する。まあ、内容は相変わらずですよ。警察の悪行とヤクザと海外マフィアに、今回はちょっと38年前の学生運動と鈴木宗男似の衆議院議員いうスパイスを振りかけてみましたという感じです。だが、しかし。登場人物たちの会話が実に楽しませてくれるんですね。グロ大生とは言え、省吾は進学校出身ですから読書家だし、グロ大教授の癖に猪俣教授は教養溢れるお話をするし、北大生として登場する彼女・茉莉菜ちゃんとの進展しない恋もイイし。こういう、よく知ってる世界で展開する物語って、本当に時間を忘れて楽しめるんですよね。読みかけの「ヒート・アイランド」を置きっぱなしにして、たった1日で完読しちゃいましたよ。