もう6冊目になるんですね。IWGPシリーズ。1997年に小説現代新人賞を取った短編「池袋ウェストゲートパーク」がデビュー作ですから、石田衣良さんは最初から連作シリーズになるキャラクター設定が出来ていた訳ですね。各冊4つの中篇が入っているのですでに24の物語が出来ている計算に。テレビドラマ化もされて、TOKIOの長瀬がマコトをやって大ヒット。ある意味、現代の小説としては一番有名なシリーズものなのかも知れません(最近「新宿鮫」もパッとしないからなあ)。しかし、スタートからすでに9年。池袋の現代風俗をテーマに取り入れていくということで、主人公のマコト(真島誠)はいつまでも20代の果物屋にしてコラム・ライター。この辺りの設定に少しずつ、綻びが生じているようにも見えます。さて、今回の4作ですが。「灰色のピーターパン」は盗撮画像を売る早熟な小学生、「野獣とリユニオン」は少年犯罪の被害者と加害者の関係、「駅前無認可ガーデン」は民間託児施設に子供を預けるホステス、「池袋フェニックス計画」では警察官僚出身副都知事による風俗浄化計画、がテーマです。それぞれどこかで聞いたような感じ。前作の「反自殺クラブ」が集団自殺に鋭く切り込んでいたのに比べると、さほどのキレは見られません。池袋のボーイズギャングの「Gボーイズ」のキング・タカシや同級生のやくざ・サル、いつもデニーズでPCをいじくってるハッカー・ゼロワンと言った常連キャラも当然登場してきます。確かに、Gボーイズの助けを借りて悪い奴を懲らしめたり、ゼロワンの力で最新のハイテクで問題を解決したり、元家庭教師の池袋署長・横山礼一郎警視正と協力して犯罪を摘発するのは楽しいエンターテインメントではあります。
しかし、マコトや周辺のキャラクターに時間の流れによる変化がさほど加わっていないところが、なんだかノット・リアルな感じを嗅ぎつけてしまうのは僕だけでしょうか。池袋のギャング情勢も、暴力団の勢力地図も、ハッキングの最先端状況も、警視庁の内部人事も、日々めまぐるしく変わっているはずなのに、どうもキャラたちが相変わらずなような気がするのです。毎回お馴染みのマコトによるモノローグも、手馴れてきたのか、どうもリアルな20代の言葉には聞えません。40代の小説家がアタマで考えた若者言葉のように見えてしまうのです。石田センセイも、お得意の小説作法を少し崩すか、まったく新しい手法を考えて、もっともっともっとリアルな池袋を描いて欲しいな、と思うのです。