僕が学生の頃は、都内に相当な数の名画座があった。映画館は封切り作品をかけるロードショー館と公開からしばらくたったものをかける2、3番館、そして旧作を含めた映画を2本立て・3本立てで見せる名画座の3種類あったのだ。懐に余裕のない学生は名画座で映画を見るのが当然で、わざわざ遠くまで足を運んで3本立てを見たりしたのだ。それが、ビデオやDVDの普及におされてか、現在都内に名画座と言える映画館は十数館に減ってしまっている。その一つ、新橋JRのガード下にあるのが新橋文化だ。ロマンポルノを中心にかけている新橋ロマンと並んで存在するここは、映画を見ている最中に線路を電車が通過する音が上の方から聞えるてくるのが特徴である。まあ、東銀座のシネパトスという映画館も地下鉄が近くを走っているので同様な音が聞こえてくる。映画鑑賞の最中に雑音が聞えてくるというのは、相当邪魔で気になるのかというと、これが実はそうでもないのだ。たしかにガタンガタンという電車の通過音はうるさいのだけれど、映画に集中していると思いのほか気にならないのである。考えてみれば、自宅でDVDを見ている時など
音こそしないものの、ついポーズにしてトイレに立ったり、冷蔵庫に飲み物を取りに行ったり、集中していないこと甚だしい訳で、やはり映画館の暗闇の中でこその集中力というのがあるのだな、と改めて考えてしまいました。たかだか100人程度しか入れない小さな映画館なんだけど、こまめに掃除し、上映作品のチラシも置いてあり、近日上映予定の作品のポスターも展示されていて、映画への愛みたいなものを感じさせてくれるいい映画館でした。やっぱりいいなあ、名画座って。