「ホテル・ルワンダ」の例もあるけれど、本国で結構ヒットしたり、時にはアカデミー候補になった映画でも、日本公開されないケースは多い。この「終わりで始まりの4日間」もその一つ。たしかに主演男優はあまり知らない顔。でも、女優はナタリー・ポートマンなんだけどね。それだけの集客力はないと判断されたのでしょうね。確かに、アメリカの青春映画、というだけでは売りが難しいだろうし。原題は「GARDEN STATE」。ニュー・ジャージー州の別名ですね。主人公のアンドリュー(ザック・ブラフ)はLAで暮らす売れない役者。母の死で故郷であるニュー・ジャージーに帰ることとなった。そこで彼は同級生たちと時間を過ごし、ふとしたきっかけで少女サム(ナタリー・ポートマン)と出会う。簡単に書いちゃえば、それだけのお話。なんだけど、不思議で奇妙な感覚が映画全体を支配していて、気持ちよく見られるんです。ストーリーや会話の展開や人物たちの設定や動き方が、リチャード・ブローティガンとかジョン・アーヴィングとかの小説みたいな感じなのです。いやあ、思いがけない拾い物ですよ。主演のザック・ブラフが書いた脚本がプロデューサーに採用されて映画化されたらしいですが、脚本・監督・主演を兼ねたこの俳優の才能は素晴らしいと思います。冒頭から主人公が外的世界に無関心だったり、
車椅子の母親がなぜか風呂場で溺死したり、不可解な設定が用意されていますが、こうしたさまざまな伏線が最後には、ひとつに結び付けられて素敵なエンディングを迎えるというのも好もしいです。アメリカ公開時はトップ10入りしたヒット作だというんだけど、配給会社の人は試写を見なかったのかな。それと、ちょっと不思議なのが、未公開のくせに邦題があるところ。まあ、「ガーデン・ステイト」じゃあ、誰も見向きもしないと思うけど、「終わりで始まりの4日間」といういかにも恋愛映画的な邦題、僕はちょっと好きじゃないなあ。ナタリー・ポートマンがかわいいし、ちょっと必見のDVDですよ。この、ザック・ブラフという人も、今後さらに活躍するようになるだろうし。そうそう、この映画のサウンドトラックアルバムは、2004年のグラミー賞のベスト・コンピレーション・サウンドトラックを取ってるんですよ。