最近の石田衣良には失望続きなので、この本もちょっと手に取るのをためらっていたのだ。長編としては久しぶりになるのが本作(といっても、短編連作なのだが)。前作にあたる「東京DOLL」もイマイチだったし、「愛がいない部屋」も平凡な短編集だった。その他ポツポツと出版されているのも企画ものっぽい掌編集やエッセイのたぐいで読む気はおきなかった。この連休に女性版画家45歳の女性版画家と17年下のウェイターの恋を描いた新作「眠れぬ真珠」が出るらしいですけど…。そんなタイミングでようやく「40翼ふたたび」を読了したのです。あーあ、やっぱし。作家本人が45歳で、この小説は40前後の男女が主人公なのだが。登場人物が幼くって、全然深みが感じられないのだ。ずっと年下の世代を描いた「IWGP」は緊張感がバリバリに仕上がってるのにね。例えば、「LAST」で描かれたような借金や人間関係でどん詰まりになった人間たちには不思議な凄みあったのにね。この緩さって、作者がお金持ちになって豪邸を立てちゃったから? と勘ぐるのは僕だけなのかな。さて、ストーリーだけど…。40歳になったばかりの吉松喜一は大手広告代理店(DとかHでしょうね)でやり手のプロデューサーだった。上司の独立話に乗って退社したものの、そりが合わず勢いでフリーのプロデューサーに。仕事もない中、「40から始めよう!」をキャッチフレーズに立ち上げたブログを通して人間をプロデュースするというのを仕事にしている。何のことはない、「IWGP」のマコトと同じフリーの何でも屋。1話目からIT長者の依頼があったり、話がうまく進みすぎるんですよ。確かに日本人の平均寿命が男78歳、女86歳と言う現代だから、40歳が人生の折り返し地点という着眼点は良いんだけど…。もちろん、切ない恋愛と別れとか引きこもり中年男の再生だとか肺ガンで5年生存率30%を宣告されたコピーライターだとか、モチーフやアイデアはきっちり考えられてるし。でもね。なんだか、淡白過ぎてさ。こういった話をぜんぶお伽話なんですよ、って済まさないで欲しいんだけどなぁ。もっともっと、思い入れ込めて、書き込んでくださいよ! 石田さん!