「千と千尋」に破られるまで、日本映画の興業記録を持っていたメガヒット映画が「南極物語」である。健さんとタロ・ジロの実話に基づいたお話は、まさに感動ものだった。これがまあ、以降の安直な動物映画を雨後の筍のように生み出すもとともなったのではあるけどね…。それはさておき、20数年のブランクを経て、あの映画をディズニーがリメイクしたというのだ。ビックリですよね。まあ、「リング」や「呪音」なんかのホラーなら、邦画のリメイクというのも理解できるのだけどね。ディズニーも動物映画のネタがなくなってきたということなのかな。さて、日本版はもちろん日本の南極探検隊と昭和基地に残された15匹のカラフト犬を描いてた訳だけど、米リメイク版はアメリカの南極探検隊の話になっている。そして、突然の悪天候で基地に取り残されるのは、8匹のハスキー犬たちだ。で、原題は「Eight below」。「below」は、ふつう以下という意味だけど、この場合は「地獄に」という意味を当てるのが適当かもしれない。日本のオリジナル版は、リアリティのあるストーリー展開で犬たちがいかにして生き抜いたかを描いていたが、リメイク版はどちらかと言えば犬たちのサバイバルを美しく描いている。まあ、ディズニー的にというのかな。海鳥を捕獲して食べるところも、描写はエグくない。結果的にも意外に多くの犬が生き抜いたことになっている。ディテールを突っ込むといろいろあるのだが、映画全体の残す印象は素晴らしいものだ。エンドロールを見ると、犬たちはダブルキャストで撮影されたらしいが、それぞれの表情も演技もまさにオスカー級。肉を取り合ったり、譲り合ったり、セイウチと闘ったり、怪我
を負った犬に寄り添ったり、ひとつひとつの動作に思わず引き込まれてしまうほどだ。出演俳優も特に有名な人が出ているというのでもないのに、2時間があっという間でした。これは思いがけない拾い物というか佳作というか、もしかすると傑作かも。実際、アメリカでも興行収入チャートで初登場1位だったという。2月17日に封切られ、20日までの4日間で計2500万ドル(約30億円)を稼いでいる。これは日本でもヒットするかもね。監督は「インディ・ジョーンズ」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のフランク・マーシャル。犬好きの方には特におすすめです。