黒田研二という作家は、メフィスト賞出身。当然のごとくミステリ系の著書が多いのだが、最新作は幻冬舎からで、しかも結婚をテーマにしているので、手にとって見ました。5人の主人公それぞれに結婚にまつわる出来事が起こる。一見バラバラな人々が物語の中で、少しずつ結びついていく。そして結末では…、という相当に練りこまれた構成。登場人物は、ナンパが趣味という独身男、突然の一人暮らしに戸惑う中年の焼き鳥屋店主、アニメキャラに夢中のオタク青年、実はホモセクシュアルであることを隠しているジムのトレーナー、会社の同僚との結婚に踏み切れない好青年。少なくとも、前半部分を読んでいる限り軽いテイストのエンターテインメント小説にしか見えません。しかも、それぞれのキャラクターや登場する女性が上手に描かれているのでサクサクと楽しく読めてしまうのです。それが後半、結婚詐欺やら誘拐やらホームレス社会やら、思いもよらぬ展開に。なるほどミステリー作家ならではの発想ですね。しかし、ちょっとやりすぎかなぁ。結末がどたばたになりすぎで、ちょっと読後感が中途半端でした。出来ることならシンプルにトリックとかのないエンターテインメントとして読みたかったですね。この作家は、十分一般小説でも書ける人だと思うので、垣根涼介が「君たちに明日はない」で山本周五郎賞取ったみたいに、バケて欲しいなあ。