「オールド・ボーイ」のカンヌ映画祭グランプリで一躍国際的有名監督となったパク・チャヌク。「オールド・ボーイ」は「復讐者に憐れみを」に続く復讐テーマ映画であり、実は3部作になるのだ、と言っていた。その完結編にあたるのが本作「親切なクムジャさん」である。主演はパク監督の「JSA」でスターになったイ・ヨンエ。3作品を締めくくるのに不足はない。イ・ヨンエは現在NHK総合で放送中の「宮廷女官 チャングムの誓い」の主演でもあり、日本での人気はさらに沸騰する可能性大。とは言え、韓国の吉永さゆりとも言えそうなイ・ヨンエが扮するのは冷徹な復讐者である。この落差が非常に面白い。ストーリーは…。無実ながら誘拐と男児虐殺の罪で刑務所に入れられたクムジャは13年の刑期を終えて刑務所を出所する。服役中、誰に対しても優しい微笑を絶やさず「親切なクムジャさん」と呼ばれた彼女だが、実は自分を陥れた男(「オールド・ボーイ」の復讐者チェ・ミンシクだ!)に復讐するために生きてきたのだ。服役中にオーストラリアに養子に出されてしまった実の娘ジェニーを取り戻し
、ついに復讐すべき男の元へとクムジャは向かう…。というあらすじなのだが、ターゲットを捉えてからの展開はジェットコースターのようである。しかしながら、「オールド・ボーイ」に比べれば殺伐とした結末ではなく、希望がある。全編を通して楽しめるのがイ・ヨンエの七変化ともいえる変貌ぶり。時には天使のように、時には悪魔のように、あるいはささくれ立った30代に、と思えば純潔な10代に、そして般若の面相に。と見る側を裏切り続けてくれる。もう一つ。出演陣が豪華なのだ。チェ・ミンシクの他にも、オ・ダルス、キム・ビョンオクが脇を固めている。さらにカメオ出演も超豪華で、カン・ヘジョン、ソン・ガンホとシン・ハギュン、ユン・ジンソにユ・ジテ、といった面々が思いもよらない場面で顔を見せてくれる。「オールド・ボーイ」ファンは必見。R-15で多少残酷シーンはあるけれど、おすすめの一本です。