バー・Radioといえば、最初のお店は神宮前にあってこじんまりしたバーだった。オーナー・バーテンダーの尾崎さんは、かの名著「バー・ラジオのカクテルブック」を上梓して有名になった。飲食関係の専門出版社である柴田書店から出たのだが、すべてのカクテルを黒バックで撮影するという(フォトグラファーは大輪真之さん)拘ったデザインの美しさで評判となり、飲食業界だけでなくデザイン関係者もこぞって購入したものだ。もちろん、この本の素晴らしさは写真だけではない。オーソドックスでありながら変幻自在な尾崎さんのレシピは新鮮な驚きだった。そして、後々この本はカクテルブックの定番となるのである。さて、現在Radioは、最初の店がなくなり、キラー通りのスキーショップ・ジローの向かいのビルの地下に2nd Radioとして営業をしている。厳選された素材と洗練されたグラス、そして熟練したバーテンダーが東京でもピカイチのお酒を振舞ってくれる場所だ。しか
も、オーナーの尾崎さんがキチンとお店で接客しているので、運がよければ彼の前に座ってお話をしながらカリスマ自身の作ったカクテルをいただくことだって不可能ではないのだ。もちろんお値段もそれなりだけれど、オードブルとして供される季節のフルーツやおつまみが美味しいことこの上ない。
この間、ちょっとしたお祝いの帰りに寄った時は、柿、キーウィ、無花果に生ハム、レバーペースト、ベーコンといった食材が美しくウェッジウッドの濃いポートランドブルーのお皿に載って出てきた。そして美味しいカクテルの数々。ミントをこれでもか、とふんだんに使ったモヒート。雪のように白く泡立つグラスホッパー。旬の柘榴とカルバドスを合わせたオリジナル・カクテル。チェイサーなどで使われるオリジナル・グラス(→)も素敵だ。まさに、そこに居た全員が幸せになる時間だった。たまには本格派のバーもいいなあ。