本年度アカデミー賞で作品賞ほか4部門を取った「ミリオン・ダラー・ベイビー」を鑑賞。たしかにきめ細かく、よく出来た映画である。年を重ねた映画監督(しかもマカロニウェスタン俳優出身)なら、こういうのを撮りたくなるだろうなあ、という作品。ネタばれ関係は後で書くけど、途中まではボクシングもの。後半は人生と人の生死を考えさせる映画。確かによく出来た映画を観るのは素敵なことだけど、最終的にこの映画から観客は何を得ればいいのかについては、疑問である。
ヒラリー・スワンクは、トレイラーハウス育ちのホワイト・トラッシュ(極貧の白人)で30過ぎのウェイトレス。クリント・イーストウッド扮する老トレーナーのコーチを受け女子プロボクサーとしてチャンピオンを目指す。というお話。狂言回しのモーガンフリーマンは元ボクサーで片目を失明したジムの雇われトレーナー。まあこれだけの役者が揃えば、駄作になるはずもないのだが…。前半部分はボクシングの才能のある女ボクサーの成功物語としてテンポもよく、イイ感じなのですがね。
卑怯な対戦相手によって全身麻痺となってしまったヒラリーはクリントに尊厳死を願うんですね。で、結局クリントはそれをやってしまう、と。映画全編を費やして、クリントは敬虔なカソリックであることも描かれていて、その辺いかにも問題提起的な訳ですが。しかし。こういう映画をつくってクリント・イーストウッドは何が楽しいんでしょう。よくやった、って褒めてもらいたいのかな。ここまで芸術的なら、スパゲッティ・ウェスタンのことは忘れてあげるよ、って言われたいの? 「ミスティック・リバー」もそうだったけど、後味悪すぎ。素晴らしい役者の素晴らしい演技は、もう少しカタルシスのある物語のために使ってほしいもんだよなあ。クリントは「ストーリー展開は原作の小説に従っただけだ」とコメントしているらしいけど、それで済ますなよなー、って感じです。そして「ミスティック・リバー」に続いて今回も音楽のクレジットはクリント・イーストウッドってなってるけど、ホントなのかしらん。あまりに褒める人が多すぎるので辛くなっちゃってゴメン。