ナイロン100℃主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチ。今年は意欲的に舞台に取り組んでいる。といってもナイロンの本公演はゼロ。プロジェクト的な「KERA・MAP」を2本とおお懐かしい「劇団健康」の復活公演というラインナップ。という訳でその第一弾「KERA・MAP#003『砂の上の植物群』」を見てきた。キャストは、これが初舞台の常盤貴子に、筒井道隆、西尾まり、渡辺いっけい、温水洋一、猫背椿、池谷のぶえ、赤堀雅秋、つぐみ、山本浩司、喜安浩平という異色の取り合わせ。一応のストーリーとしては…。舞台は近未来の世界。日本へ向かう飛行機が途中で墜落。奇跡的に生き残った数人の男女が、戦争状態にある島でサバイバルする。というもの。常盤ちゃんはこのフライトで辞めようと思ってたスチュワーデスという役柄。乗客にはお笑い芸人(温水)、カップル(赤堀・猫背)、怪獣好きな若者(筒井)、金持ちの婦人(池谷)などがおり、彼らをかくまう現地の日本人を渡辺いっけいが演じる。墜落から数日経っても日本からの救援はやってこない中、登場人物たちは少しずつ壊れていく…。裏切りあり、暴力あり、妄想あり、○○あり、という結構エグいお話を3時間半(内休憩10分)見せてしまう、脚本と演出は一級品。回転テーブルを大小使った凝った装置とスクリーン映像をうまく使っている。渡辺、温水は相変わらず上手く、猫背と池谷の存在感も舞台を引っ張っていた。特に池谷の歌と踊りが秀逸。西尾の不思議な投げやり感も良かった。赤堀は悪役に徹して、グッド。テレビ畑の二人はどうかというと。常盤は顔小さくて美しい。声は出ているが、舞台としてはちょっと弱いかという感じ。見に行ったのがまだ3日目くらいだったので楽日までに、どう変われるか。筒井はぼそぼそした喋り(が持ち味なのかもしれないが)でつかみどころがない。ネタばれになるので詳しくは書かないけど、途中の伏線の張り方や予想もつかないケレンが楽しい。ハッピーな話ではないが、キャストの層の厚さと脚本・演出の巧みさでメジャー感のある舞台となっている。チケット入手できれば、見ておいたほうがお得かと。ところでタイトルだが、僕はまず吉行淳之介の小説を想起したが、さらにその原典となったパウル・クレーの画題からの引用。劇中にもキチンと出てくるし、内容ともリンクしていてなかなかオシャレだと思った。