見てきました。今のところ、都内では2館で上映中。平日の夜の回で三分の入りは、公開三週目としては、この規模ではヒットと言っていいんじゃないかな。
まあ、町山智弘さんの紹介で知ったんだけど、去年のカンヌ映画祭でグランプリを取っているんですよね。今月末に発表されるアカデミー賞でも、外国語映画賞にノミネートされていて、大本命なのだそうです。
舞台はアウシュビッツ・ビルケナウ収容所。有名なナチスドイツによるユダヤ人の強制収容所です。そこで働いているのは、ゾンダーコマンドと呼ばれるユダヤ人たち。同じユダヤ人の処刑や死体処理を行わせるためにナチスが作り上げた部隊なのです。
主人公のサウルは、ハンガリー系ユダヤ人のゾンダーコマンド。同胞に対する大量殺人への協力を心を押し殺して行っているのです。収容所の入り口には「働けば自由になる」という文字が書かれています。収容所に運ばれてくるユダヤ人たちは、この収容所で働くのだと聞かされています。しかし、多くのユダヤ人(特に老人・女性・子供)は労働の役にたたない“価値なし”と判断され”処分“されることになります。シャワーを浴びた後でパンとスープが与えられる。専門職を持つ者は後で申し出ろ。と言われシャワー室前の脱衣所のフックに服をかけて裸になりシャワー室へ向かいます。しかし。そこから生きて戻ることはありません。シャワーヘッドの穴から出てくるのは殺害のためのガスなのですから。
この映画の画面は昔のテレビのような正方形に近い縦横3:4のスタンダードサイズです。その画面に映る映像は、ほとんど主人公サウルの顔のアップです。その四角い画面と顔の間にフォーカスの合わない背景が映っています。そこには列をなしてガス室に向かうユダヤ人や、死体の山、火炎放射器による焼却、死体の解剖などの映像がようやく分かるくらいぼんやりと見えているのです。この手法はまさに発明で、アウシュビッツを描くのにこれを選んだ監督は素晴らしいと感じました。
字幕が少ないため何を話しているのかわからないところもあるのですが、それ以上にリアリティあふれる映像が観客を惹きつけてやみません。あっという間の107分です。ストーリーについては触れませんが、題名と関係あるとだけ言っておきましょう。
この映画はぜひ映画館で見ていただきたいと思います。