券をいただいて、国立劇場の
「社会人のための歌舞伎入門」というのに行ってきた。勘三郎の襲名もあって、世間は歌舞伎ブームらしい。ブームにはのっておけ、という主義なので早速である。今月国立劇場では、3月花形若手歌舞伎公演「通し狂言 本朝廿四孝」を上演中である。通常平日は12時開演で午後3時40分終演なのだが、その後夜7時から、月に2日だけ「入門公演」を行っているのだ。まあ、平日の午後では勤めのある人間は行けるはずもないので、サラリーマンやOLに歌舞伎を楽しんでもらうためのアイデアであろう。初めに30分ほどの解説があってから、本来三幕四場の「本朝廿四孝」の後半一幕二場が見られるという趣向である。通常公演が1等席で8500円のところ、「入門」は4500円だから、金額的にもお得である。解説は歌舞伎役者の片岡嶋之丞という人。京大を出てから歌舞伎の世界に入った女形なのだそうだ。客席から男性二人(開演前に決めていたらしい)を舞台に上げて、女形のしぐさや歩き方をやらせるなど、まあ親しみやすい構成である。そして、本番。出演は中村時蔵、片岡愛之助、片岡孝太郎ほか。孝太郎は「白い巨塔」にも出ていたね。ストーリーというほどでもないが、「本朝廿四孝」武田信玄と上杉謙信との間での諍いを扱った狂言である。歌舞伎女形のお姫様役の中でも三つの大役「三姫」の一つが「本朝廿四孝」の八重垣姫なのだ(あとの二つは「鎌倉三代記」の時姫と「金閣寺」の雪姫らしい)。今回八重垣姫に中村時蔵、蓑作こと武田勝頼に片岡愛之助、武田の腰元濡衣(ぬれぎぬ)に片岡孝太郎が扮する。「入門」公演なので、序幕・武田信玄館勝頼切腹の場と二巻目・道行似合の女夫丸はカット。亡き勝頼と思って八重垣姫が香を焚く大詰・長尾謙信館十種香の場と奥庭狐火の場を見る。豪華絢爛な衣装と生の浄瑠璃が雰囲気である。解説パンフレットにあらすじや役者の紹介とともに、台本がフルでのっているので、分かりにくい古語も大丈夫。動きの少ないお芝居の部分は台本を見て楽しみ、踊りやたちまわりは素直に舞台を楽しむ。なかなか有意義な2時間だったなあ。これで、歌舞伎が好きになる人も多いんじゃないかな。ちなみにこの「入門」、次回は6月21日(火)で演目は「
歌舞伎十八番の内 毛抜」で出演中村信二郎。その次は7月20日(水)、22日(金)で、演目は「
義経千本桜」で出演は市川右近、市川笑也。1等席で3800円は安いですよ。