今年はナイロン100℃にとっては本公演のない年らしい。とは言え、ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏としては忙しそう。5月、6月にKERA・MAPの連続公演として、常盤貴子初舞台の「砂の上の植物群」とフルキャスト・オーディションによる「ヤング・マーブル・ジャイアンツ」。さらに8月には劇団健康として12年ぶりの最新作も控えている。という中での若手公演。さすがに脚本は別役実、オープニング・コントも宮沢彰夫提供である。もちろん演出はケラさんなのであるが。劇場は笹塚ファクトリーという小屋。笹塚駅前のビル地下2階の劇場で、これが杮落としとなる。劇場前に桟敷席、あとは椅子席でキャパは200弱かな。出演若手は7名。植木夏十、眼鏡太郎、佐藤竜之慎、皆戸麻衣、廻飛雄、柚木幹斗、白石幸子(客演)。別役実の不条理ナンセンス劇がとっつきやすく演出されているのは、やはりケラさんの手腕であろう。ストーリー(という程のものではないが)は、肺ガンで死期が近い考古学者とその妻が、海岸にある砂山から「ナウマン象」を掘り出そうとしている設定。そこに水着姿の男女や、牧師が登場。牧師は砂山に埋まっている救世主を掘り出すと言う。さらに現れた医者と看護婦は、プロポーズの印として埋めた初手術で摘出した盲腸を掘ると主張する。まあ、訳の分からない内容である。たぶん、別役的には、砂山に埋まっているものが何かの象徴であったりするのだろうが、それはそれ。会話における繰り返しや微妙な間のとり方にケラ色がでている。が、役者の技量的にはやはり若手というだけのことはある。およそ1時間20分くらいだが、別役作品を楽しく見られただけで満足とすべきかも…。場面転換やエンディングでかかった昭和30年代風の音楽が印象に残った。