乙一の短編集「ZOO」の中の「落ちる飛行機の中で」の舞台化を見てきた。脚色・演出はトラッシュマスターズの中津留章仁。出演は、汐風幸、樋渡真司、井手らっきょ、中村綾というところ。新宿、スペース107にて。劇場はキャパ150名という感じですか。土曜のマチネで、ほぼ満員。客席の3分の1は宝塚ファンの雰囲気ありあり。群像劇ではあるけれど、汐風幸と自転車キンクリートの樋渡真司がメインの役どころ。ストーリーは、T大5年連続不合格の青年が飛行機をハイジャックし、T大校舎にぶちあたれと命令。飛行機の乗客は何人かが発砲によって殺される。その限られた環境の中での展開である。もともと、原作小説がとっぴな展開をするので、劇も同様。登場人物もぶっ飛んだキャラクターが多く、ちょっとマンガ的ではある。ならば、それが演劇的に面白いかというと、ちょっと微妙。最近流行りの小劇場系と比べると、キャストが素人っぽい(もしくはジャンル違い)ので観客を巻き込む力が弱いんですね。少々上滑りなまま劇は進む。乙一の小説って、小説世界では異彩を放つんだけど、演劇世界への定着は難しいのかも。結末のつけ方もいま一つか…。途中何度か、舞台が暗転してVTRが挿入されるんだが、これもあまり必要でない感じ。役者では、犯人役をやった、ひわだこういち、スチュワーデス役の高木りな、が良かった。