レイ・チャールズが亡くなったのは去年の6月10日のこと。その時点でこの映画の製作は始まっていた。完成した映画を見ることは叶わなかったのだが、主演俳優のオーディションなど主な製作工程にレイ本人も関わっていたという作品である。といってヨイショ伝記という訳でもなく、レイの麻薬汚染や浮気なども赤裸々に取り上げている。この映画の白眉はなんと言っても主演のジェイミー・フォックスで、まさにレイ・チャールズそのものに成りきった演技はアカデミー賞ものかも。演技だけでなく、作品中での演奏・歌唱もこなしていて、これは凄すぎる。こないだのグラミー賞にも出て歌っていましたね。とまあここまではイイのだが、僕個人的にはちょっと、楽しめなかった。フォックスの演技や演奏が完璧になればなるほど、映画の存在意義に疑問がついてしまうのだ。そっくりならイイのか? 悪い面も描いたから、客観的なのか? そうではないでしょ。やはり、本人が関係した伝記映画の限界というのかなぁ。黒人差別への反対にしても、薬物中毒からの脱出にしても、最後の匙加減において、本人への遠慮があって、結果美化してるようにしか、見えてしまうのだ。やはり、映画は映画として独立したエンターテインメントであって欲しい、と思う僕はひねくれ者でしょうかね。それにしても、ゴスペルをラブソングにし、次はカントリーを黒人音楽にし、ヒットさせたレイってある意味パクリの天才じゃないかとも感じたんだけど、どうでしょう。