これぞおいし~い「あったか鍋!」
下北沢に「七草」という和食店がある。オープンは一昨年の秋。昨年の春に、山本益博さんが絶賛したことで、雑誌の取材が殺到し、人気店になった。先だっての「GQ」や「brutus」のレストラン特集でも取り上げられたし、今月号の「danchu」や「料理王国」も扱っている。今、東京でもっともアツいお店なのだ。店主の前沢さんは以前渋谷の「やさいや」で厨房に立っていた。「やさいや」は渋谷JRガード隣ののんべい横丁にある和食店で店名どおり、京都おばんざいを出す店の先駆けとして知る人ぞ知る存在。「やさいや」を辞めた後、前沢さんは大塚の「なべや」で修業し、「七草」を開くこととなったのだ。「やさいや」は冬季に鴨鍋を出していたが、「七草」では冬、お麩の鍋を出す。肉も魚も貝もなく、具はお麩と野菜のみなのだ。鍋にはだしに醤油と塩で味をつけたスープ。そこに車麩(丸いかたちの麩)を油で揚げたものをいれ煮る。さらに生麩を加え、これが浮いてきたら野菜(水菜や壬生菜)を入れ、いただくのである。
これが美味しい。思いのほか味わいのある麩が体を温めてくれる。生麩も胡麻入りと生成りが用意され、ふっくらもっちりとした食感が嬉しい。すべてを食した後には、ご飯と三つ葉とたまごでお雑炊にする。これも美味! ある意味、究極の鍋であろう。「七草」の麩鍋はコースに含まれる。にんじんのすりながし、れんこんと鯵、海老芋の揚げだし、豚ばらと大豆の味噌炊きなどの後に鍋が供される。さらにデザートは球形の豆腐を寒天でかため黒蜜をかけたものが楽しめる。これでコース4725円。おとくです。