おたく高校生と11歳の少女がスーパーヒーローになる、というコメディと思ってたら、ちょっと様相が違いました。アメリカでは、公開週に全米ナンバー1になっただけあって、ただのおバカ映画ではありませんでした。さすがカルト映画雑誌「映画秘宝」の年間ベスト1。それにしても、町山智浩パワーはすごいな。もともと公開予定のなかったこの映画公開を実現させちゃうんだから。ちなみに、翻訳も町山氏。こんなめちゃ汚いスラングだらけの会話は町山さんじゃないと訳せませんよね。スーパーヒーローに憧れる、おたくの高校生が主人公のアメコミ・ストーリーなんだけれど、そこにマフィアに騙され妻を失った元警官とその愛娘の別なコスチューム・ヒーローがからんでくる。不細工なコスチュームで荒唐無稽なストーリーなのに、ガン・プレイと暴力描写のディテールが、ハンパないです。青春コメディ的な緩さとバイオレンス&スプラッタ・アクションの激しさのバランスが絶妙に取れてるとでも言うのかな。そして細かなエピソードのディテールが秀逸。最初に主人公が刺された上にクルマに轢かれちゃうんだけど、そのおかげで金属入りの肉体で末端神経が不感症になるとか、ホモに間違われてクラスの美少女と付き合い始めるとか、悪党の息子がおとりになるためにスーパーヒーローになっちゃうとか、YouTubeでキック・アスが人気者になるとか、連絡とる方法はマイスペースだとか。相当考え抜かれた脚本ですね。まあ、11歳の少女が人を殺しまくるとか、殺人シーンが残酷すぎるとか、そのへんが気に障る人は見ないほうがいいと思いますが、ある意味、カルトな傑作だと思います。しかし、これが全米ナンバー1になるんなら、カルトとかサブカルって奴はもうメジャーと紙一重なのかもしれませんね。この映画見てて真っ先に想起したのが、平山夢明さんの小説群。この映画の悪党の世界は「ダイナー」で描かれた世界と言ってもいいかもしれません。再度言いますが、こんな傑作が日本公開されないままに終わっていたのかもしれないと思うと、町山さんの功績はホントに大きいですね。
あ! マシュー・ボーンといっても白鳥の湖で有名なダンス演出家ではありません。あの方は、Matthew Bourne。こちらの映画監督は、Matthew Vaughn。英語で発音すると全然違うんですけど、カタカナでは同姓同名になっちゃうんだよなぁ・・・。
それと、もう一つ。もともとアメコミのこの作品。過去のエピソードを紹介するところで、アメコミタッチの3Dアニメーションが出てくるんですが、それがとってもカッコよかったです!