石田衣良の最新作はITの聖地秋葉原が舞台である。IT関連で働く「おたく」たちが驚異的なAI機能付きサーチ・エンジン「クルーク」の開発に成功。しかしそのソフトは巨大IT企業に盗まれてしまう。秋葉原のIT企業の牙城から盗まれたクルークを取り戻すオペレーションが始まる。てな感じの物語。まあ、石田衣良といえば「IWGP」なんだけど。ある意味この作品も同じである。主人公グループの戦い&成長ストーリー。それは、直木賞受賞作の「4teen」でも同じだった。登場人物は…。潔癖症で女性恐怖症のwebデザイナー。文章力は天才的なのに、キーボードを通さないとしゃべれない吃音のライター。音感・リズム感は超敏感なのに時々音に反応してフリーズしてしまうデスクトップミュージシャン。コスプレ喫茶に勤めながら格闘技を極め、迷彩服に凝りまくる超美少女。アルビノの中卒天才プログラマー。引きこもり歴10年の元法律家。そこに、謎のインド人ストリートブローカーやソフトバンクを思わせるIT経営者などが絡んで、楽しいことはこの上ない。頭が下がるのは、秋葉原およびPC、ネット関連についてのリサーチの綿密さであ。実のところまったく荒唐無稽なストーリーをなんとか着地させているのは、キャラの魅力とディテールの緻密さなんだろうな。とは言え結末はちょっと嘘っぽすぎたかなあ…。しかし、全体を流れるグルーブ感は、まさに衣良節。「IWGP」のファンは必読。あと、ITおた、の人も是非読んで欲しーなー。