久しぶりの更新です。インディペンデントなドキュメンタリー映画。NY在住の佐々木芽生監督が自己資金で撮り続けた、現代美術収集家である老夫婦を追った作品。アメリカの美術界では有名な存在の二人なんだそうですが、何故か映画化は初めて。これまでも何人もの有名な映画監督が映画化の話にはきたそうですが、どれも実現せずに無名の日本人が作品をものにしたっていうのが実情だそうです。映画が完成してアメリカのいろんな映画祭で上映されて、最優秀作品賞やドキュメンタリー賞をとっているのに日本での公開はまったく決まらず。最終的に配給会社に頼らずにボランティアの組織で上映館まで見つけてきて公開にこぎつけたというあたりは、さとなおさんのサイトやツイッターでご存知の方もいるかも。封切りは渋谷のイメージフォーラムで。公開初の土日は満席続きだったとか。個人の繋がりとソーシャルネットワークの機能でここまで来るという、極めてイマ風な広がりをみせた映画なんですね。個人的にはそんなに興味はなかったんですが公開3日目の夜に見に行きました(実のところ、アート好き女子のためのオサレ映画だろな、って思ってましたんで初日二日目は二の足踏んだんです…)。流石に雨の月曜日だったので満員ではなかったけど、7割くらいの入り。ホントに話題になっていたんだなぁ、と実感。東京以外での上映も順調に決まっているようですね。映画そのものもドキュメンタリーとして完成度が高く、薄っぺらなオサレ・フィルムどころか、ハーブとドロシーのアートにかける思いが素直に深く伝わってきました。なにしろ、マンハッタンの狭い1LDKのアパートに暮らし続けた上、そのスペースにコレクションすべてを収納して続けたんですから。クルマも持たず、ファッションやインテリアにもお金を使わず、休日はひたすらギャラリー巡り! 郵便局勤務のハーブと図書館勤務のドロシーのお給料で数億ドルにもなろうというコレクションを成し遂げられたのは、なによりもアートだけに興味を持ち続けたからだと言えそうです。逆
な見方をすれば、この老夫婦は極端な現代美術オタクだったんですよ。贅沢な食事や華美な服装や優雅なリゾートなどに目も向けず、ひたすらアート、アート、アート! この超オタクっぷりは、はっきり言って普通の人間には絶対真似できません。映画を見終えて感じたのは、コレクターもある域を超えるとアーチストに化けちゃうんだってこと。明らかにハーブとドロシーは中途半端なアーチストなんか凌駕した存在になったと言えるんじゃないでしょうか。さらにこの映画、日本では有名じゃないモダン・アートも数多く紹介してるところもいいですね。好き嫌いはあるかも知れませんが、見といて損はないと思います。
なによりも、一番感じたのは、監督の佐々木芽生さんのパワーが凄いってこと。ハーブ&ドロシーのアートへのこだわりも超強力だけど、佐々木監督のこの映画に対する執念はそれに勝るとも劣らないのではないでしょうか。公開3日目のトークショーでちょっとだけお見かけしただけですが底知れぬパワーを感じましたよ。この映画、もう一つの見方として監督・佐々木芽生の誕生ドキュメンタリーという側面もあるのではと思いました。次回作は、やはりハーブ&ドロシー関係らしいですが、違った分野の映画も見てみたいですね。